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<目撃>爆速でサハラ砂漠を走るアリ、謎を解明

10/19(土) 8:50配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

1秒間に体長の108倍を移動、60℃を超える灼熱の砂漠ゆえの進化か

 サハラギンアリ(Cataglyphis bombycina)は、きらめく極小のミサイルのようだ。焼けつく砂漠で輝きを放ちながら、暑さに倒れた動物を探して駆け回る。その足の速さは、昆虫全体で見てもトップクラスだということを明らかにした論文が、10月16日付けで学術誌「Journal of Experimental Biology」に発表された。

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 チュニジア、ドゥーズの灼熱の砂漠で行われた最近の実験で、サハラギンアリは、秒速およそ85センチという記録をたたき出した。1秒間で体長の約108倍もの距離を移動したことになる。人間の大きさに当てはめると、なんと時速640キロ以上に相当する。

 この値を超えるのは、米カリフォルニア州に生息するダニの仲間Paratarsotomus macropalpis(1秒間に体長の377倍)やオーストラリアハンミョウの一種Cicindela hudsoni(同171倍)など、わずか数種の無脊椎動物だけだ。

酷暑のなかで生き抜くために

 サハラギンアリの超高速移動は、おそらく過酷な砂漠での生活に適応した結果だ。そのおかげで、気温60℃にもなる暑さにやられる前に、すばやく仕事をこなせる。細長い体形は放熱に有利だ。また、金属光沢を放つ特殊な体毛が体全体に生えており、光を反射し、過熱を防ぐ。

「進化の観点から見ると、北アフリカの砂漠は食物が少なく、高温な気候であるため、サハラギンアリは自然選択により、餌となる死体をすばやく効率的に探し回るのに不可欠な能力を獲得したと考えられる」とドイツ、ウルム大学の生物学者ザラ・ペッファー氏らは論文に書いている。

 全般的にこの研究は、厳しい環境で動物が遂げる驚くべき進化を解明する新たな切り口を示すものだ、と論文には述べられている。

1秒間に約50歩の猛烈なピッチ

 ペッファー氏らはまず、サハラ砂漠で、サハラギンアリの地下の巣をいくつか特定し、巣の正面に小さな通路を設置した。そして、サハラギンアリを通路の先のスペースに集め、走り回る様子を上からハイスピードカメラで撮影できるようにした。

 その映像を分析すると、サハラギンアリの動く速さが計算できた。その速度を、体がわずかに大きい近縁種であるサハラサバクアリ(Cataglyphis fortis)と比較した結果、意外なことがわかった。体の大きさに対する比率でいうと、サハラギンアリはサハラサバクアリより脚が短いにもかかわらず、移動速度は2倍も速かったのだ。

 映像を詳しく調べると、その理由が判明した。メカニズムは単純だった。サハラギンアリは、短い脚を猛烈な速さで動かしていたのだ。なんと1秒間に50歩近くも進み、脚の接地時間はわずか1000分の7秒という速さだった。

 またサハラギンアリは、不安定な砂の上でさえ、見事に体の動きをコントロールしていた。6本のうちの左右3本の脚を同調させ、3本ずつ2セットの脚を絶え間なく動かして走る。さらには、速度が上がると、速く走る馬のように、すべての脚が地面から離れる瞬間のある走り方をした。

「小さくて脚の短いサハラギンアリが、脚のピッチで補っているのには驚きました」と米ペンシルベニア州にあるビラノバ大学の生物学者アリッサ・スターク氏は話す。なお、同氏は今回の研究には関わっていない。体が過熱するのを防ぐには、熱い地面から体が離れるように、脚が長くなる進化もあるはずだ。それを考えると、これは本当に驚くべきことだと、同氏は付け加える。

 イスラエル、テルアビブ大学の動物学者アミール・アヤリ氏は、近縁種のアリ同士を比較した今回の研究手法に感銘を受けたという。

「今回報告された種間の違いが、筋肉の生理学や、さらには神経制御のレベルでも見られるかどうか確認してみると、非常に面白いでしょう」と同氏は提案する。

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