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極右政権の台頭にヘイトや排外デモ……。現代に響くディランやスライの叫び <戦うアルバム40選 激動の’60年代編>

10/19(土) 15:31配信

HARBOR BUSINESS Online

 ’10年代も終わりを迎えようとする現在、同年代の初めには想像もできなかったほど、世界は混乱の一途を辿っている。少し前までは恐れる必要さえなくなっていた保守的な価値感覚まで復興。「もう当たり前」と思っていたような民主主義や自由が再び危機にさらされることで、芸術やエンタメの世界でも、社会と今一度向かい合って物申さざるをえないような、そんな状況になりつつある。

⇒【画像】当時黒人が座ることを禁じられた場所に座る抗議行動というアルバム・カバーがまず強烈だった『We Insist!』Max Roach(1960)

人種、性別、階級……怒りと誇りが融合した時代

 今回から4回にわけて始まるこの「戦うアルバム40選」は、世界の音楽アーティストがアルバムという表現フォーマットを通していかに戦ってきたか。また、それらの精神性がいかに今に受け継がれるかを、葯60年の歴史から40枚のアルバムを厳選して紹介していく。

 第1回の今回のテーマは「激動の’60年代」。公民権運動に始まりベトナム戦争を経て、それまでの「正義の強いアメリカ」の欺瞞に対して当時の黒人や若者たちの新しい音楽カルチャーが一石を投じ始めた瞬間の名作アルバム10枚を紹介する。

◆『We Insist!』Max Roach(1960)

「アルバム全体で社会問題を表現した歴史上最初のアルバム」かとなると確証こそはできないが、名ドラマー、マックス・ローチによるこの問題作はその有力候補だろう。

 黒人が座ることを禁じられた場所に座る抗議行動というアルバム・カバーがまず強烈な本作は、女性シンガー、アビー・リンカーンによる、虐げられたアメリカでの黒人奴隷の歴史とその解放、そしてこの当時に勃興していたアフリカでの独立運動を切々と伝える物語を、先祖回帰を高らかに宣言するかのような実験的なアフリカン・テイストで徹頭徹尾、怒りと誇りと共に肉づけする。

 この当時の公民権運動においてさえ、音楽面においては白人リベラルのフォークシンガーか、黒人でもゴスペルでの神への祈りが主流だったが、そんな時代に、黒人自身が反抗と民族主義的アプローチでストレートに訴えかけたこの姿は、黒人たちの音楽での訴えかけの道筋を変えた。

◆『Freewheeling Bob Dylan』Bob Dylan(1962)

 アメリカの民謡(フォーク・ミュージック)が労働者の心情と結びつき、資本主義やナチスと戦った歴史は第二次世界大戦前には存在したが、それをアルバムで音楽を聴く時代に、「若者たちの社会への怒り」と共に結実させたのが、“フォークの神様”ことボブ・ディランのこのセカンド・アルバム。

「人として認められるまでの長い過程」に希望と苛立ちを投げかけ、公民権運動のアンセムとなった「風に吹かれて」、キューバ危機で実現を恐れられた核戦争の恐怖を歌った「激しい雨が降る」、世界を戦争への不安と恐怖に陥れる政治家たちを痛烈に皮肉る「戦争の親玉」など、混乱する時代の名アンセムがここにはある。次作『時代は変わる』と共に、’60年代の時代精神を理解するうえで必須の存在だ。

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最終更新:10/19(土) 18:18
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