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痩せゆく土壌と弱体化する農作物──食料供給の危機に立ち向かう研究者たち

10/20(日) 13:10配信

WIRED.jp

選抜育種で失われた“強い”微生物

このジレンマから抜け出す道を示す可能性をもつのが、現在も野生の状態で育っている作物の原種だ。こうした原種は現代の作物ほど養分を必要としないことが多く、病気との闘いにうまく対処できる微生物コロニーを伴うなどの有益な特性をもっている。

だがこうした特性は、非常に長期にわたる選抜育種のなかで失われてしまった。ラーイマーカースのチームは、そのような特性を見つけ出して、作物種のなかに再び導入したいと考えているのだ。

「わたしたちが試みているのは、いなくなった微生物たちを見つけ、それらの微生物に植物の成長や保護に役立つ機能があるか確かめることです」と、ラーイマーカースは説明する。チームは現在、コロンビアとエチオピア、オランダにおいて、ジャガイモやコーリャン(ソルガム)などの作物の野生種の現地試験を実施しているところだ。

ラーイマーカースとオランダ生態学研究所(NIOO)で研究を続けている行うウィム・ファン=デア=パトンも、現代の食料作物には早急にリセットが必要であるとの意見に同意する。「わたしたちの環境調査によると、農業においてシステムエラーのようなものが起きていることが示されています」

弱くなっていく土壌という問題

人類は、栄養は豊富であっても病気に弱い植物を選択し続けてきたことで、自ら問題の種をまいてきたとファン=デア=パトンは説明する。「現在の土は一度しか使えないものになっているのです」

これまでわたしたちは、足下に隠れている土について気に留めてこなかったが、科学者たちは土が直面する多くの脅威について懸念をもつようになっている。まず第一に、豊かな土壌は限りある資源だ。1cmの表土(土の最上層で植物の成長に必要な養分の多くが含まれている)が自然に形成されるには、100年以上かかる。

一方で、耕起や単一栽培を行う近代農法では、土が脆弱化して強風で飛ばされたり、豪雨によって流されたりしやすい。農薬や肥料も、土壌微生物に害を与えるため、土壌が弱くなる。英国環境庁が19年6月に発表した報告書によると、イングランドとウェールズにおける耕作可能な土壌の40パーセントに浸食の危険があると考えられるという。

さらに悪いことに、土壌には相当量の二酸化炭素が貯め込まれているため、土壌にひびが入ると大量の温室効果ガスが放出される可能性がある。ランカスター大学で持続可能性の講義を担当しているジェシカ・ディヴィスは、土壌破壊は気候変動を加速するのだと指摘する。「土には、すべての樹木と大気を合わせたよりも多くの二酸化炭素が含まれています」

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最終更新:10/20(日) 13:10
WIRED.jp

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