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新入社員に飛び込み営業の業務命令、これはパワハラか

10/21(月) 16:00配信

NEWS ポストセブン

 ビジネスの最前線で戦う営業マンは会社に欠かせない存在だが、彼らの仕事は断られるのが当たり前。とりわけ“飛び込み営業”は、タフな精神力が求められる。新入社員はまず営業に配属されることも多いが、新入社員への飛び込み営業の業務命令はパワハラになるのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。

【相談】
 文具メーカーの管理職です。新入社員が営業の仕事に熱心ではないようなので、文具店に飛び込み営業をさせようとしました。しかし、当該社員から「その営業のやり方はストレスを生みますし、パワハラだと思います。労働基準局に訴えます」とまでいわれました。この業務命令がパワハラになりますか。

【回答】
 業務をする上で飛び込み営業が不可欠であれば、新入社員にも慣れてもらわなくてはなりません。経験に基づいた、OJT(職業教育、企業内教育手法)を命じる業務命令が、無理強いのパワハラだと批判されては困るでしょう。

 パワハラとは、職場の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為と定義されています。

 具体的な行為態様には【1】/身体的攻撃(暴行・傷害)、【2】/精神的攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)、【3】/人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)、【4】/過大要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)、【5】/過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)、【6】/個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)の六類型があります。

 パワハラかどうかは、当該行為の動機、目的、内容、態様、時期・時間、場所、周囲の状況、当事者の人間関係などをもとにし、総合的に判断すべきであると解されています。

 暴力や暴言がなくても、飛び込み営業がOJTとして合理性がなく無意味な作業と誤解されると、その指示はパワハラといわれかねません。飛び込み営業の経験の大切さ等を説得する努力が必要です。

 通常人なら理解するであろう説得をしても効果がない場合は、職場変更を考慮するか、営業職として採用されたのであれば、就業規則に従った業務命令違反として対処するしかありません。しかしながら、OJTの説得の前に、AIを駆使してビジネスに活かす時代に、飛び込み営業が本当に役立つことなのか、自省する姿勢も大切だと思います。

【プロフィール】竹下正己●1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2019年11月1日号

最終更新:10/21(月) 16:00
NEWS ポストセブン

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