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原発「爆発」から考えるリチウムイオン2次電池

10/21(月) 6:00配信

JBpress

 JBpressは日本のメジャーメディアで唯一、自然科学系のノーベル賞に関して時差なくまともな科学的解説を載せるメディアとなっています。それは小谷太郎氏など現役のサイエンティストが筆者として寄稿するからにほかなりません。

 ただし先週から今週にかけての国難というべき台風で、物理も化学も解説が遅れていました。小谷太郎氏によるレビューが多くの読者に読まれ、何よりと思っています。

 これが1~2か月もすると物理学会誌などの専門誌、また「日経サイエンス」のような媒体も良心的な解説を出し、とても良いと思うのですが、良くも悪しくも広がりに限界があり、何より時宜を逸している場合があります。

 社会が一番興味を持っているタイミングで、まともな解説を出すことは重要です。

 親しくご指導いただく先輩である東京工業大学の河合誠之さんから「JBpressでリチウムはやらないの?」とリクエストをいただきました。

 小谷君(私とは東京大学理学部物理学科の1学年後輩で一緒にゼミを開いていた仲間)には、どうやら逃げられてしまったようです。

 私は化学の専攻では全くありませんが、小谷君は「伊東さんは物性出身だから」という。そこで河合さんともお話しし、今回は私が記すことになりました。

 元素の著書がある小谷君には「Li」に特化した原稿をリクエストすることにして、今回は私が、リチウム電池周辺の基礎科学について、いま広く知ってほしいと思うポイントを物質の本質ならびに「発火事故」にも言及しつつ記してみたいと思います。

■ 開発競争を制したから偉いのではない

 国内で目にするノーベル賞報道が最低なのは「日本が取った」みたいな、五輪まがいの競争根性で無内容な多幸症的ラッパを吹き散らかすことにあります。

 確かにノーベル財団の発表は「リチウムイオン2次電池の開発」に対して2019年のノーベル化学賞を与えたとしている。

 でも、そこに込められた基礎科学の本質から社会的な要請まで、一番大事なことはほとんど紙面に載りません。

 これは2000年の冬、白川英樹先生からご指摘を受けて以来、一貫して大事に考えてきたもので、2008年の南部陽一郎先生がノーベル賞を受賞して以降、こういう解説を記すようになりました。

 例えば、なぜ「リチウム」なのでしょうか? 

 また、ノーベル賞のお祝い記事には、どうして発火事故や回収その他のネガティブな面を記さないのでしょうか? 

 おそらく日本的忖度でしょう。そして、日本人受賞者であるはずの吉野彰さんの中心業績を「特定の結晶構造をもつ新炭素材料」などと、いい加減なブラックボックスでごまかしてしまうのでしょうか? 

 これらは、この技術がノーベル賞を受けるに至った最も本質的なポイントと密接に関連しており、私たちの未来を考えるうえでも、広く平易な言葉で共有されるべきものと思います。それを記します。

 中学校や高等学校で「化学」に相当する内容を学ぶとき「原子」とか「元素」という言葉が出てきます。高校の教程だろうと思いますが、メンデレーエフの周期律表というものが登場します。

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最終更新:10/21(月) 7:30
JBpress

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