ここから本文です

親の介護問題から目を背け続けた56歳男の後悔

10/21(月) 5:25配信

東洋経済オンライン

 「介護は突然、自分の身に降りかかってきた」

 斉藤和茂さん(仮名、56歳)はそう振り返る。3年前の正月、お盆以来半年ぶりに埼玉県の実家を訪れると、父(当時88歳)の様子が明らかにおかしかった。足元はおぼつかなく、トイレに行くにも壁伝いで何とかたどり着く状態。失禁することもあった。すでにアルツハイマー型認知症だった。

この記事の写真を見る

 自分で身の回りのことができなくなったため、母が「デイサービスに行こう」と誘うと、「年寄り扱いするな」と怒鳴り、頑として行こうとしなかった。「お前はもういらない、出ていけ」と母に暴言を吐き、気に入らないことがあると暴力を振るった。警察を呼び、場を取りなしてもらったことも一度や二度ではない。

 「これほどひどい状態だと思っていなかったので驚いた。と同時に、実家に戻って介護をすることになったら仕事ができなくなるなと慌てたのも事実」(斉藤さん)。正月明けに実家近くで母が通いやすい特別養護老人ホームを探し、希望に近い新築の施設を見つけた。「申し込みは100人を超えていたようだが、警察を呼ぶほどという父の様子を話したからか、入居の優先順位が高まったようだ」。

■父の意思を確認せず施設に入れたことを後悔

 同年2月にはその施設への入居が決まったが、父にどう伝えればいいのかわからなかった。車で施設まで連れていこうとして、「ちょっと外に出てみないか」と声をかけても父は無言。何も伝えられないまま日が過ぎた。

 入居前日の夕食時にも結局切り出せず、「デイサービスでさえ行かなかった父だから、明日は大騒ぎになるはず。どうしても嫌と言ったら諦めようと考えた」(斉藤さん)。

 当日の朝、父の部屋をのぞくと、ベッドのシーツ、枕カバーが取り外され、掛け布団とともにきれいに畳んであった。斉藤さんの顔を見ると父は一言、「でかけるぞ」と言った 。「施設に入居することの覚悟を決めたように感じた。涙が出るほどつらかった」(斉藤さん)。仕事や子どもの進学など、自身の生活を優先して話を進めたことに今も後悔が残る。

1/3ページ

最終更新:10/21(月) 5:25
東洋経済オンライン

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事