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「飲みません」服薬拒否の胃がん患者に、医師と薬剤師は…

10/22(火) 8:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

インターネットや書籍で得た知識によって、自身の健康管理をする人が増え、誤った知識を覚えてしまう例が散見されています。しかし、情報に翻弄されているのは、何も患者さんだけではありません。本記事では、公益財団法人仙台市医療センター仙台オープン病院で薬剤師として勤務する橋本貴尚氏が、情報化社会における医療従事者と患者さんの関わり合いについて考察していきます。

事例1:情報を語る患者さん、耳を傾ける薬剤師

多職種が集う仙台市民向け健康フェアに、薬剤師として参加したときのことです。筆者は薬剤師会ブースの健康相談員として、希望する市民に対し、お薬のことを中心に様々な話を聞く担当となりました。

するとまず先輩薬剤師から、「こういう健康イベントに、統合失調症の方などがよくいらっしゃいます。ブースで何十分もお話をされていきますので、そうなるとすべての順番がずれてしまいます」といわれました。

はじめ、相談に来たのは高齢者ばかりでした。世間話に始まり、お薬のことや健康上の不安のことなど色々なお話をしていきました。

すると20~30代くらいの男性が、筆者の隣にいた薬剤師の前に座りました。その後、10分以上は話していたでしょうか。断片的に聞こえてきたのは、「私は、○○の添加物は一切摂らないようにしているんです」、「睡眠薬というのは……」、「私、OTC薬は信用できないんです」といった内容です。対応した薬剤師は笑顔を崩さず、辛抱強く耳を傾けていました。男性は最後に、「お薬とは関係ない話をしてたくさんの時間を取ってしまってすみませんでした。ありがとうございました」といって帰っていきました。

対応した薬剤師は、「こういう場でしか色々話せないんだろうね。ひたすら耳を傾けるのみです」と話していました。「先輩薬剤師のいったことは本当だったんだ!」と驚いたと同時に、たくさんの思いを自分のなかに抱え込むしかない患者さんに思いを馳せた経験でした。

事例2:「服薬拒否」に至った胃がんの女性患者

S-1(抗がん剤)の内服が外来で開始になった、胃がんの高齢女性です。調剤薬局から疑義照会※がありました。「患者さん、本当は3日前からS-1開始予定だったのですが、具合が悪くて今日まで薬局に来られませんでした。どのように対応しますか?」とのことでした。

※疑義照会・・・処方箋をもとに薬剤師が調剤を行うにあたり、処方箋の記載に疑問点・不明点を感じた際、処方箋の作成者に対して内容の確認を行うこと

S-1というお薬は服用期間と休薬期間が決まっています。次回の外来日は休薬期間明けの日に決まっていましたので、「飲み終わりは当初の予定どおりにしますので、3日分飲み残す方針でお願いします」と回答しました。
 

その後、患者さん自身から電話が来て、薬剤師が対応しました。「S-1内服前から皮疹があった。皮疹が治っていないのに飲んでいいのか?」という内容でした。薬剤師は電子カルテの診療録を確認した上で「主治医は皮疹のことは把握していますので、内服して構いません。ただ、もしひどくなるようでしたらご連絡ください」と返答しました。すると患者さんは「不安なので、次の外来までS-1は飲みません」といって電話を切りました。

主治医に報告したところ、この連絡の前日に直接電話が来ていたそうです。主治医としても説明に難渋していた様子で、「飲まないって本人がいうなら仕方ない。次の外来でまた考えます」という話で終わりました。

結果的に、患者さんの不安が解消されず、服薬拒否に至ってしまった事例でした。我々薬剤師の「ひどくなったら連絡するように」では、患者さんの不安をあおるばかりで、全然相談になっていなかったな、と非常に反省しました。

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最終更新:10/22(火) 8:00
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