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涙も年齢も力の差も受け止めて。田中史朗が若者に託す「もっと上」。

10/22(火) 19:01配信

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 涙がとめどなくこぼれ落ちた。

 ワールドカップでの戦いが、終わったからではない。スタジアムの空気が、ピッチから見上げる景色が、田中史朗の感情を激しく揺り動かしたのだった。

【秘蔵写真】1人で海外参戦した田中の雄姿、4年前ちょっと笑いかけた稲垣、昔から凄かった姫野・福岡・松島に細すぎリーチ、カッコいい五郎丸、平尾、廣瀬、大畑、松尾…名ラガーマンの若き日。

 「長いこと代表でやってきて、どうですかね、次(のW杯出場が)があるかわからない、もしかしたらこれで最後なのかもっていう思いもありましたし、やっぱりたくさんの方に応援しに来ていただいたので。

 自分がずっと2011年以降に思い描いていた光景が目の前に広がっていたので、試合に負けたことはすごく悲しかったですけど、ホントにこう日本ラグビーの幕開けじゃないですけど、日本ラグビーがここからまた進化していけるんだとファンの方を見ていて思ったので、それがこう、涙になって流れました」

「日本らしさを見せることはできたので」

 南アフリカには力の差を見せつけられた。前半こそ3-5のクロスゲームへ持ち込めたが、時間の経過とともにスコアを広げられてしまった。

 「負けて偉そうなことは言えないんですけど、南アフリカはすごくスマートなチームになっていました。4年前は力で僕たちをねじ伏せようっていうだけのチームだったのが、後半から戦術を変えてきて、ペナルティを取ってゴールを狙ってきたり。

 勝ちにこだわるチームになっているなと。相手の底力というか、セットピースの部分で少しずつ押されてしまったところもありました」

 田中は71分から出場した。流大との交代は5試合連続だが、ピッチに立つタイミングはこれまででもっとも遅かった。

 「僕自身のプレーは3試合目までは良かったんですけど、スコットランド戦と今回の南アフリカ戦は……今回はあんまりチャンスがなかったというか、出場時間も短かったですし、試合が少し決まったような状態で出たので、自分の良さをアピールする部分は少なかったと思うんですが。まあでも日本らしさを見せることはできたので、チームとしては良かったと思います」

「日本ラグビーは一歩踏み出せた」

 ラグビーW杯に出場するのは、2011年と'15年に続いて今回が3度目になる。'08年の日本代表デビューから積み上げてきたキャップ数は、10月20日の南アフリカ戦で「75」となった。今回のメンバーでは最多であり、日本代表史上5位となる。

 キャップ数は日本のために戦った証であり、日本ラグビーに思いを巡らせてきた時間を示すものでもある。34歳のスクラムハーフは2019年のW杯という「点」ではなく、日本ラグビーを「線」でとらえることができる。

 「今回のW杯で、日本ラグビーは一歩踏み出せたと思います。ホントに自分が思い描いていた日本のラグビー文化が根づく第一歩というのが、この僕たちのベスト8ということなので。

 もうひとつ上に上がれればもっともっと良かったと思うんですけど、ホントにたくさんの人に応援していただいて、これからの子どもたちもそうですし、若い選手たちがこれからの日本を引っ張っていってくれれば、もっともっと日本に文化として根付いていきますし、もっともっと上を目ざせると思う」

 ベスト8より「もっともっと上」とは、ベスト4でありファイナリストであり、世界一ということになる。ここから先は、一歩を踏み出すのがさらに難しくなっていく。

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最終更新:10/22(火) 19:36
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