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「She is」編集長・野村由芽が、全女性必読の切実な本音をすくった3冊を紹介

10/23(水) 6:30配信

Book Bang

 消えてしまった思いや発されなかった言葉、なくなってしまったものはどこにいくのだろう? そう、子どもの頃から思っている。学生のとき、授業中に後ろの座席から前を眺めながら、同級生の頭たちからそれぞれの思いがふきだしでているのが見えた。海水の量と、これまでに生きた人の涙の量は、どちらが多いのだろうか。

 おそらく今年中に、結婚というものをすることになって、苗字が変わること、戸籍上では野村由芽という名前ではなくなることについて考えをめぐらせる時間が増えた。相手となる人が、旧家の生まれであると前から聞いていたこともあり、苗字が変わることにはなるだろう、と想像のうちでは認識していたものの、いざ結婚ということになって、腹落ちしなくて戸惑った。その戸惑いにはさまざまなことが含まれるのだけれど、ひとつの大きな理由は、冒頭でこぼした違和感、「これまでの苗字だったときのあまたの人格は、どこにいくのだろう?」という思いが強いからなのだった。

 だからなのか、身近な人にわたしはよくインタビューをする。多くの人はインタビューをされることは少なく、たとえば父と母の初デートの場所も知らなかったりする。わたしも知らなかったので、母に聞いたら「……えっ!?(笑) 映画館だったと思う。新宿の。『インディ・ジョーンズ』だったかな。自分は観ないジャンルだったから、こういうものを観るんだーって思った。記憶のなかではそう」だそう。ほかのだれにも知られていなくても、そこにはたしかに声がある。声のかたちや大きさはまちまちだけれど、個人の人生という物語があるかぎり、その物語を紡ぐ声が存在する。

 長田杏奈さんの『美容は自尊心の筋トレ』、王谷晶さんの『どうせカラダが目当てでしょ』、北村紗衣さんの『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』の三冊は、自分にも噓をついてしまうような場面が減らない日々のなかで、どれも切実な本音の声で、女性のからだや心を、ほかのだれでもない自分のものに取り返せますように、という三人の願いが活字になっている。

 まず『美容は自尊心の筋トレ』。美容というと、「絶対的な美」に脅かされて萎縮してしまう経験をもった人が少なくないと思うのだけれど、「自分を大切にすることを習慣化し、凝り固まって狭くなった美意識をストレッチする『セルフケア』の話がしたい」と著者は言い切っている。

「自尊心の筋トレ十訓」という十箇条を掲げ、いつのまにかかかっていた「こうあるべき」の呪いをほぐす。まわりから自分の価値を判断されることの多い性別で生きてきた女性たちが、自分を救えますように─。自分を救える「わたし」が増えることで、そのわたしが手をとりあう連帯の輪が、いままさに広がりつつある。

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最終更新:10/23(水) 6:30
Book Bang

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