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ベトナム漁船が仰天、目の前に中国原潜が突如浮上

10/24(木) 6:00配信

JBpress

 (北村 淳:軍事社会学者)

 ベトナムの漁業関係者がソーシャルメディアに掲載した情報によると、先月、多数のベトナム漁船群が操業していた西沙諸島周辺海域で、ベトナム漁船のまっただ中に中国海軍原子力潜水艦が突如浮上した模様だ。

【写真を見る】ツイッターに掲載された、南シナ海で浮上した原潜の写真

 ツイッターに掲載された写真が事実であるならば、ベトナム漁船群の直近に姿を現した潜水艦は中国海軍094(09-4)型弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(いわゆる戦略原潜)である。

■ 原潜の浮上は異常事態

 第1次世界大戦や第2次世界大戦で用いられた潜水艦は、敵から身を隠す必要がある場合に「海中に潜航することができる軍艦」であった。つまり、基本的には海面を航行し、必要に応じて海中に身を隠して行動する仕組みとなっていた。

 これに対して現代の潜水艦は「海中に潜航することができる軍艦」という位置づけではなく、基本的には「海中で作戦行動を継続する軍艦」という位置づけになっている。すなわち、基地周辺海域などでは海面に姿を現したまま航行するものの、ひとたび海中に姿を消すと、帰投するまで海中を潜航し続けて行動することになるのだ。

 通常、原子力潜水艦は出動すると2カ月は海中に留まり続けている(原子力潜水艦の場合、理論的には無限に潜航し続けることができるのだが、生身の人間が乗艦しているため潜航期間は2カ月ほどが限界になる)。

 したがって、ベトナム漁船群が操業している海面に中国海軍原潜が姿を現したという「謎の浮上」は、世界の海軍関係者にとってはまさに「極めて異常な事態」ということになり、その原因に関してさまざまな憶測を呼んでいる。

■ 政治的理由ではないかという憶測

 本コラムでも繰り返し取り上げてきているように、中国は南シナ海の大半を囲い込む「九段線」内海域を「中国の主権的海域」であるとしている。アメリカはそのような主張は国際海洋法上容認できないとして、軍艦や爆撃機を南シナ海、とりわけ中国が軍事拠点を手にしている西沙諸島周辺海域と南沙諸島周辺海域に送り込んで中国を牽制する「FONOP」(公海航行自由原則維持のための作戦)を断続的に実施している。

 中国は、アメリカのFONOPに対して不快感を示しているが、これまでのところ、軍事的な反撃(軍艦や戦闘機を繰り出して米側を牽制することは別として)は行っていない。そこで今回、西沙諸島沖合で原潜を浮上させることによって「南シナ海は中国の海である」という中国の立場を目に見える形で示そうとしたのではないか、という憶測もある。

 これと似通った憶測として、近頃ますますベトナム漁船と中国当局の間でのトラブルが頻発している西沙諸島周辺海域で、ベトナム漁船群を脅かしつけるために、巨大な戦略原潜を漁船群のまっただ中に浮上させたのではないか、というものもある。

 (かつてベトナムが実効支配していた西沙諸島は、1974年にベトナム戦争の混乱に乗じて中国軍が侵攻しベトナム軍を撃破して占領して以来、中国が実効支配を続けている。現在も、中国とベトナムそして台湾が西沙諸島の領有権を主張している。)

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最終更新:10/24(木) 10:05
JBpress

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