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米中冷戦、構図変化で「ここからが本番」と言えるこれだけの理由

10/24(木) 6:01配信

現代ビジネス

闘いはこれからが本番

 10月10日から始まった米中貿易交渉では、中国が米国産農産物の輸入拡大と為替政策の透明化、知的財産権の保護を約束する代わりに米国が追加関税の発動を見送ることで「部分合意」がなされた。

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 米中貿易交渉については、これまで、米中の当事者双方がまるでゲームを楽しむかのように、展開がめまぐるしく変わってきた。したがって、これで米中貿易摩擦の問題が解決の方向へ向かうと楽観視するのは危険極まりない。

 かといって、日々更新されるニュースを追いかけて右往左往したところで何の意味もない。それよりも、この問題については、背後にあるより本質的な変化に注意する必要があるのではなかろうか。

 その「変化」とは、米中がこれまでとは異なる「ゲーム」を始めたのではないかという点である。

 簡単にいえば、日米両国は、「貿易」という限定的なイシューではなく、「国のあり方」を問うより本質的かつ広範囲なイシューを問題にしつつあると考える。そう考えると、米中関係については、楽観視するどころか、むしろ、闘いはこれから本番を迎えると覚悟すべきかもしれない。

 そこで、以下、この米中連戦の構図の変化を、最近の国際貿易論において、国際分業体制を表現する際に用いる「スマイルカーブ」という概念で考えてみる。

米中国際分業の構図

 「スマイルカーブ」とは、1つの貿易財を生産工程で分解し、横軸に生産工程の各段階を、縦軸にそれぞれの生産工程が生み出す付加価値をとりグラフ化したものである。

 具体的な生産工程として、左(川上)から右(川下)へ、順に「商品企画・デザイン」、「研究開発」、「部品生産」、「組立加工」、「物流」、「営業・販売」、「メインテナンス(アフターサービス)」が並べることができる(図表1)。

 そして、1つの貿易財が生み出す収益(付加価値)を工程別に分解した場合、両端(「商品企画・デザイン」、「メインテナンス」)の付加価値が高く、真ん中(「加工組立」)が低いというのが一般的な形状である。これはまるで「ニコニコマーク」の口のような形状になるために「スマイルカーブ」と呼ばれている。

 このスマイルカーブをみると、1990年代半ば以降、米国企業はより多くの付加価値を生む工程に特化する一方、付加価値の低い真ん中の部分は中国を中心とする東アジア諸国にアウトソースしてきた(「オフショアリング」と呼ぶことが多い)ことが分かる。

 具体的にいえば、商品企画・デザインや研究開発は米国国内で、そして、部品生産は日本をはじめとする東アジア諸国で、そして、加工組立は中国で、そして、物流、営業・販売、アフターサービスは米国というような国際分業体制が構築された。

 この国際分業体制は、ハイテク企業を中心に、米国に高い生産性を擁するグローバルレベルでのリーディングカンパニーを多く輩出させることになった。これは、アップル社の「iPhone」を思い起こせば理解可能であろう。

 この「スマイルカーブ」上の両端に特化する米国企業の経営戦略は、1990年代以降、何度か訪れた世界的な経済危機から、米国経済がいち早く脱出することに貢献した。すなわち、高い付加価値の獲得が株価を押し上げ、株価上昇が消費や設備投資といった米国の内需拡大に大きく寄与した。米国は「グローバル化」の流れをうまく誘導することで再生に成功したのである。

 そして、このグローバル化を利用した米国の再生と表裏一体であったのが中国の台頭であった。

 中国は、安価な労働力を背景に、「世界の加工組立工場」としての地位をほぼ独占的に獲得し、グローバルな世界貿易体制の中の重要なプレーヤーとなった。確かに中国が競争優位を有する加工組立の工程は、貿易財が生み出す付加価値全体に占めるウェートとしては小さい。だが、低賃金による低コストを背景とした「薄利多売」でトータルでは大きな収益を獲得し、中国を世界第二位の経済大国に押し上げることになった。

 そして、これを、前述の「スマイルカーブ」の議論に当てはめると、中国の安価な労働力は、低付加価値の分野において、米国の非熟練のブルーカラー労働者を代替し、彼らを国際貿易体制から締め出してしまったのである。

 そして、その一方で、中国の安価な労働力を利用することで米国企業の経営者や株主は、国際貿易体制から莫大な利益を得ることになった。

 このように考えると、最近までの米中貿易戦争の背後にある「取り残された白人ブルーカラー(彼らの多くがトランプ大統領を支持したといわれている)」の問題は、実のところは、米国内の経営者(資本家)と(非熟練)労働者の対立という米国内部の構造的な経済問題であったと考えられる。

 そのため、米国の企業経営者や資本家の多くはトランプ大統領による執拗な中国叩きをあまり支持してこなかった。そして、当然、その背後には、米中貿易戦争は国際分業のメリットを否定する誤った経済政策であるという論理が存在していたことになる。

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最終更新:10/24(木) 6:01
現代ビジネス

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