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ReoNaのライブは、孤独にそっと寄り添ってくれる濃密な空間

2019/10/25(金) 12:00配信

ザテレビジョン

アニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション』EDテーマ「forget-me-not」などで人気を高めたシンガー・ReoNaの、21歳の誕生日に開催された「ReoNa ONE-MAN Live”Birth 2019”」。深紅のベルベットのカーテンにシャンデリア、蔦が絡まった白いステージセットに、クラシカルな雰囲気。黒いワンピースにライダース姿のReoNaは、登場からステージを去る瞬間まで、観客と終始“一対一”で向き合い続けていた。

【写真を見る】バースデイライブの様子。誕生日にも関わらず、ケーキもサプライズも無い演出がReoNaらしい

■ ReoNaの表現力に、次第に深く引き込まれていく

幕開けは最新シングル「Null」収録の「怪物の詩」。ピアノに合わせゆったりと身を揺らしながら歌い始めたかと思えば、突如、華奢な体を折り畳むようにして感情を暴発。その振り幅に心を鷲掴みにされる。アニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』の劇中アーティスト・神崎エルザとしての楽曲と、ソロデビュー後の楽曲とを分け隔てなく、互いに溶け込ませるようにしてライブは展開。メジャーコードに乗せ明るく歌うことでむしろ別れの切なさを増幅させる「ヒカリ」、「それではみなさん、おやすみなさい」と囁くような直前のMCとは裏腹に、激しいロックサウンドに乗せ鋭く言葉で切り込んでいく「おやすみの詩」。どの曲にも心地よい裏切りがあった。

ReoNaがエレキギターを掻き鳴らし、叫び声のような歪んだ音色を響き渡らせた後、「Dancer in the Discord」がスタート。ダークロックに荘厳な合唱、ジャジーな要素もある複雑な楽曲を、多彩な歌声で見事に表現していく。続いて、興奮冷めやらぬ中息の上がった状態で語り始めたのは、神崎エルザが歌を歌い始めた原点が、大切な祖父母との別れであったこと。「悲しくても、苦しくても、さよならを、それだけにしないために…始まりのうた」と呟くように語り、届けたのはミディアムバラード「葬送の儀(うた)」。ミラーボールが輝く幻想的な空間で、ReoNaはアコースティックギターを爪弾きながら歌唱。泣く直前のような昂った感情を、そのまま強さに変換したような、覚悟の決まった歌声に息を呑む。この後の「カナリア」では、絞り出すようなウィスパーボイスと澄んだファルセットに聴き入った。本物のエモーションと確かなテクニックを兼ね備え、曲の物語を余すところなく伝えるReoNaの表現力に、次第に深く引き込まれていく。

■ 観客との関係や曲にリスペクトを持ち、一対一で向き合う

「『アニソンシンガーになりたい』って、言っちゃいけないって思ってたんです。『なれっこないよ』とか、『無理だよ』とか言われるのが怖くて…」とかつての自分を振り返るReoNa。「そんな私に、『お歌を歌ってもいいよ』と言ってくれた存在が、神崎エルザでした」と語り、劇中歌「ピルグリム」、続けて「Rea(s)oN」を丁寧に、一音一音を慈しむように切々と歌い届けた。伝わってきたのは、自身の歌声を届ける媒介となった原点・神崎エルザに対する感謝の気持ちである。また、ReoNaが楽曲を“お歌”と呼び大切に扱う姿勢には、演じる役を“お役”と敬う歌舞伎役者に通じるものを感じた。観客との関係だけでなく、曲にもリスペクトを持って一対一で向き合う。そんな真摯さが彼女の歌に命を吹き込み、掛け替えのないものにしているのだろう。

終盤を迎えても衰えることない声量で「Lotus」を歌い終え、「(蓮華は)澄んだ綺麗なお水よりも、濁った泥の中のほうが大きくて綺麗なお花を咲かすんだって」と、独り言のように呟いたReoNa。暗闇の中で一人心細かったとき、「誰かに寄り添ってほしかった」と自身の過去を重ね合わせながら、次曲「決意の朝に」へとならだかに向かっていく語り。このように、曲と曲とを繋ぐReoNaの言葉は、“みんな”に向けて叫ぶようなMCとはテンションも内容も懸け離れていて、長いモノローグ、あるいは一編の詩のような美しい響きとリズムを持つ。深い呼吸を交え、区切りながら語られる一言一言に、観客は集中してじっと耳を傾ける。Zepp Tokyoという大きなライブハウスが、まるで密やかな告白部屋に様変わりしたような、不思議な感覚に包まれるのだった。

■ 予定調和とは無縁の、一対一の真剣なコミュニケーション

「ALONE」にはストリングスカルテットを招き入れ、ロックとクラシックの融合した重厚なサウンドに乗せて、ReoNaは孤独を賛美するかのように高らかに歌った。ラストは『ソードアート・オンライン』シリーズ原作小説刊行10周年のテーマソング「Till the End」をライブ初披露。歓喜のどよめきが沸き起こる中、男女12名の合唱団が加わる壮大なスケール感で圧倒。ReoNaは埋もれることなく中心に凛と立ち、低音から高音のロングトーンまで自在に操って、奥行きのある感情を歌によって描き出していた。

ReoNaのライブにアンコールは無い。誕生日ライブにも関わらず、ケーキもサプライズも無い。そこには、予定調和とは無縁の、一対一の真剣なコミュニケーションだけがあった。孤独にそっと寄り添ってくれる、あの濃密な空間にまた浸りたい。そんな気持ちにさせるステージだった。

(取材・文 / 大前多恵)(ザテレビジョン)

最終更新:2019/10/25(金) 12:00
ザテレビジョン

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