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クセ者・元木大介はなぜヘッドコーチに選ばれたのか/川口和久WEBコラム

11/5(火) 11:14配信

週刊ベースボールONLINE

野球センスの塊

 東京ドームに取材で行くと時々、視線を感じることがある。
 それで、すっと振り向くと、いつも彼がいるんだ……。
 
 現役時代、長嶋茂雄監督にクセ者とも呼ばれた元木大介だ。昔から背中にも目があるのかと思うくらい周囲をしっかり観察している男だった。
 こう書くと、細かくて暗いヤツみたいだが、それは違う。いや、細かいところはあるかもしれんが、礼儀もしっかりしてるし、明るい好青年だ(もう青年じゃないか)。

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 OBが球場内のファン向けにやっているレジェンド解説で、試合前にお客さんに説明をしていると、元木がグラウンドからタイミングよく声をかけてくる。
「川口さん、よっ、男前!」とかね。
 お客さんがどっと笑って、途端に雰囲気がよくなる。こちらも大歓迎だ。

 その元木が巨人のヘッドコーチになった。
 ヘッドコーチというのは、軍隊なら参謀かな。監督より年上だったり、同年配のコワモテが多かった印象がある。

 監督の代わりに選手たちに厳しいことを言ったり、逆に厳しい監督の本音をかみ砕くように選手に伝えるタイプもいた。

 年下だと、長嶋茂雄監督時代の原辰徳さんがそうだったね。次期監督の修行みたいな意味合いもあったんだろう。
 元木の場合、どちらもちょっと違うかな。

 俺が巨人の現役で重なっている時期は長くないけど、元木という選手は攻守で野球センスの塊だった。欠点といえば、足が遅いことくらい。
 知識も豊富だし、頭もいい。あとはメンタルだね。集中力がすさまじく、何度も書いているように、いつも周りがしっかり見えている男だった。

 ただ、必死に練習している姿はほとんど印象がないなあ。
「こいつはセンスだけでどれだけ野球ができるのかに挑戦してるのかな」
 と思ったくらいだ。

 たぶん、天才だから努力しなくても高校時代までは問題なかったんだろう。でも、プロの世界、特に巨人のバッターは怪物みたいな選手がたくさんいた。センスだけじゃ突き抜けることができない壁があり、結果的には、たまに光る選手で終わってしまったようにも思う。

 その元木が19年シーズンから巨人のコーチになった。タレント活動が長かったから「コーチなんて無理じゃないか」みたいに言う人もいたが、俺は悪くないな、と思った。
 誤解されやすいが、あいつは野球に関しては決してふざけない。いつもマジメだ。
 実際、春季キャンプで原監督が言っていた。
「今回、キャンプで一番しっかりやったのは大介だ」って。

 2019シーズンは三塁コーチをやったが、三塁コーチは、第2の監督とも言われる。走者を回すかどうかはベンチじゃなく三塁コーチの判断でいかないと間に合わない。瞬時の的確な判断も必要だし、その判断の仕方が監督と合うことも必要だ。リスクがあっても行くのか、あるいは止めるのか、という判断がベンチとずれないというのかな。

 特に原監督は、そういうあうんの呼吸をコーチに要求するタイプだ。
 ぱっと声をかけたとき、すぐ的確な言葉が返ってこないと嫌がる。その意味では元木は適任だと思う。

 あと原監督が評価したのは、元木の視点だと思う。人とは視点が違い、しかも鋭い。話していても、「そういう見方があるのか」と感心することが何度もあった。
 たぶん、原監督は今年1年の戦いで、何か足りないものを感じ、それを埋めるものが元木にあると思っているんじゃないかな。

 俺は、いいヘッドコーチになる予感がしている。意外とね。

写真=BBM

週刊ベースボール

最終更新:11/5(火) 11:21
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