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闘え、チョリータ!折れない心を持つボリビアの女子レスラーたち【世界の女性を包む闇】

11/9(土) 18:03配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

「人には尊敬に値する自分たちのヒロイン、プロレスラー、チャンピオンが必要なのです」。ボリビアの都市エルアルトで、「フライング・チョリータ」と呼ばれるユニークな女子プロレスの一団を10日間取材したブラジルの写真家、ルイーサ・ドル氏はそう語る。何枚も重ね着したスカート、刺繍付きのショール、頭に乗せた山高帽などのカラフルでエレガントな服装をした先住民族の女性「チョリータ」は、20世紀初頭に登場した。彼女たちの表現はいわば、南米先住民の女性たちの間で起こったルネサンスのようなものだ。

ギャラリー:ボリビアの女子プロレス「チョリータ」 写真23点

 ドル氏がフライング・チョリータに初めて出会ったのは、夫が地元の建築家と一緒に仕事をしていたときのことだった。地域の多目的センターで行われた日曜日の試合を観に行ったという。「チョリータの試合と男性の試合は全然違います。男性の試合はさほど目新しいものではありませんが、ショーを見応えあるものにしているのはチョリータたちです。若い観客は正義のヒロインを応援し、年かさの人たちは悪役を好んでいるようです」

 チョリータたちは週に2度トレーニングをし、技術を磨くためにYouTubeでメキシコのプロレスを観戦する。「戦いにおいて何より重要なのは、常に戦略をアップデートさせることです。これは自転車に乗ろうとするのと似ています。歩くことを覚えた人は、それを決して忘れないでしょう。しかしより高度な技を使いたいなら、練習が必要です。戦いも同じで、学習は永遠に続きます」。父親やきょうだいもプロレスラーだというクラウディーナさんはそう語る。

更衣室の使用が認められず、観覧席で着替えたことも

 そしてうまくなればなるほど、彼女たちは男性に独占されている分野で存在感を示せる。ときには、男女が戦う試合が組まれることもある。「女性が100パーセントの力で戦えば、男性は1000パーセントの力で対抗してきます。彼らは女性に負かされることが我慢ならないのです。プロレス仲間の中には、女子プロレスラーに反対する人たちもいます」。そう語るのは、プロレスラーとして20年間戦ってきたマリー・リャノス・サエンスさんだ。「初めのころ、女性たちは男性の更衣室に入ることが許されず、観覧席で着替えていました。だからわたしたちはファイティング・チョリータ協会を立ち上げたのです。この団体に男性は関わっていません」

 ドル氏は言う。「チョリータたちはジャーナリストや雑誌のことなど、ほとんど気にかけていません。彼女たちの多くは、自分が読みもしない記事のためにカメラマンの前で時間を無駄にしたくないと思っています。チョリータたちがこうした態度を取る理由のひとつは、彼女たちが、有名になることよりもはるかに差し迫った課題に取り組んでいるからです。何世紀もの間、彼女たちはコミュニティの幸福を守るために、リングの外で戦ってきたのです」

 チョリータのプロレスラーたちの大半は、南米の高原に暮らすアイマラ族だ。彼らは、一帯でスペインによる植民地化が進んだ時代から、圧迫と搾取に苦しめられてきた。当時は侮蔑的に「チョロ(男性への呼称)」あるいは「チョラ(女性への呼称)」と呼ばれていた。そして、貴族の召使いとして働くことを強いられ、欧州の習慣を受け入れることを求められ、レストラン、公共交通機関、一部の富裕層居住区に入ることや、投票、土地の所有、文字の学習を禁じられた。

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