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「ロマン」で読み解く、中国人の地政学

11/9(土) 15:00配信

Forbes JAPAN

西部に感じる「ロマン」

 
時代が下って14世紀、明の時代になると鄭和(ていわ)の大航海だ。その100年後のコロンブスの船と桁違いの巨艦に座乗した鄭和の辿ったコースが、海のシルクロードに他ならなかった。
 
さて、西部大開発である。中国官民の意気込みとは裏腹に、必ずしもうまくは運んでいない。鉄道が延伸し、高速道路が走り、壮大な町並みが砂漠に出現したものの、少なからぬプロジェクトが休眠状態にある。オルドスの鬼城(ゴーストタウン)がその象徴かもしれない。
 
磐石な地位を固めた習近平にとっても、西部大開発は大きな課題である。彼が、西部地域のみならず、さらにその先の、西域をも視野に入れた大プロジェクトに執心していることは周知の通り。一帯一路構想だ。米国は、これを中国の覇権主義、拡大主義として警戒している。確かに『新しい大国関係』を米国に提案する一方、アジアインフラ投資銀行に多くの国々を糾合する中国に、危険な野望を感じ取るのも無理はない。『中国梦』は米国にとっては悪夢と映る。
 
だが、長い歴史を振り返ると、一帯一路を単純に政治的、領土的野心と決めつけるのは、早合点かもしれない。中国人の西部と西域への思いのかなりの部分には、『ロマン』があるのではないか。現代版『西遊記』のような心情が、彼の国の通奏低音かもしれない。
 
日本は、昨年来、中国との第三国協力を進めている。安倍総理と習主席の相互訪問も日程に上ってきた。日中両国が歴史問題ではなく、歴史ロマンを共有できないものだろうか。
 
唐の大詩人李白は、長安の都で『少年行』と題して詠んだ。「銀鞍白馬度春風、落花踏尽遊何処、笑入胡姫酒肆中」。ちょっとバブリーな青年が、春の最中、銀の鞍の白馬で花を踏みしめ、ひょいと覗いたパブ。店には美しいイラン系のギャルが待ち受ける。にやりともするだろう。
 
少年時代の習近平もこの詩を読んでいたに違いない。そういえば、李白の学遊仲間の一人が、日本から来ていた阿倍仲麻呂であった。

川村雄介◎1953年、神奈川県生まれ。大和証券入社、2000年に長崎大学経済学部教授に。現在は大和総研特別理事、日本証券業協会特別顧問。また、南開大学客員教授、嵯峨美術大学客員教授、海外需要開拓支援機構の社外取締役などを兼務。

川村 雄介

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最終更新:11/9(土) 15:00
Forbes JAPAN

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