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ロベルト・エンケ10周忌に寄せて 主治医が語ったスポーツ選手のメンタル

11/10(日) 19:58配信

footballista

「プロスポーツの世界は、いまだに心の病を理解できていない」

心の病に苛まれたロベルト・エンケがこの世を去ってから、今日でちょうど10年の歳月が流れた。今週末開催のブンデスリーガ各試合では、キックオフ前に彼へと黙とうを捧げ故人を偲ぶシーンがあった。しかしながら、彼の悲劇を経験した後も、少しでも高いパフォーマンスを目指し極限状態で戦うスポーツ選手のメンタルに対して十分な理解が進んでいるとは言いがたい。その現状について、かつてエンケの主治医を務めたバレンティン・メルクサー氏の言葉から紐解いてみたい。エンケの悲劇を繰り返さないためにも。

文 鈴木達朗


 11月10日は、ドイツ代表GKを努めていたロベルト・エンケの命日だ。当時32歳だったエンケは2009年のこの日、自宅近くの線路に飛び込み投身自殺を図ったのだった。

 ハノーファーで不動の守護神の地位を確立し、そしてドイツ代表でも2010年南アフリカW杯に向けて陽気に意気込みを語っていたエンケの死は、驚きをもってドイツ国内はもちろん、世界中に伝えられた。誰一人として、彼の死を理解できなかったのだ――主治医でさえも。

 「彼の病について知っていたみなが、ロベルトが快方に向かっていると思っていました。北ドイツのクリニックに入院する話し合いを終わらせたばかりで、その日取りも決めたところでした。私たち全員が、大きな一歩を踏み出したと思っていたのです」

 9月28日の『ハノーファー・アルゲマイネ』紙に、当時主治医を務めていたバレンティン・メルクサー氏のインタビューが掲載された。メルクサー氏は当時を振り返りながら、現在のスポーツ選手を取り巻く環境について話している。

スポーツ界を取り巻くシステムは、10年前と変わっていない

 メルクサー氏が精神科医および心理療法士として接するのは、スポーツ選手だけではない。むしろ、一般的な患者の中にスポーツ選手が混じっている。数多の患者を診療してきたメルクサー氏は、スポーツ選手と他の一般の人たちを比べて、気づいたことがあるという。

 「ロベルト・エンケの死によって、ハッキリしたことがあります。スポーツ選手全般が、精神的なストレスに対して最も耐久性が低いグループに属するということです。彼らの状況を本当に変えるためには、私たち診療医の方から積極的に働きかけなければいけません。時間はありません。

 私の下には、一般患者に混じって有名なスポーツ選手が来ることもあります。診療は、毎回50分の話し合いを兼ねた診断を行います。(一般患者とスポーツ選手との診療)内容に変わりはありません。私の目から見て、ロベルトは非常に才能豊かで、とても繊細な人物でした。彼が危機的な状況にあったことはすぐにわかりました」

 こう振り返るメルクサー氏は、精神的な治療が当時も今も、秘密にされなければならないことを残念に感じている。

 「今ではもう、サッカーのみならず競技スポーツの世界全般で、アスリートが精神的な障害を抱える可能性があることに異議を唱える人々はいません。私たちは、少なくとも、そこまでは成し遂げました。しかし、いまだにスポーツ界のシステムは、2009年当時のままです。スポーツ界全体が、まるで精神を病んだ人々へより良い治療を施すための変化を拒んでいるようにすら思えます」

 その理由はさまざまだとメルクサー氏は指摘する。1つ目は、クラブまたは所属先が「商品」のイメージが悪くなるのを恐れていること。2つ目は、常に競争に晒される選手や監督自身は「弱さ」を認め、それについて話すことに拒否感を感じていること。そして3つ目に、アイドルを求めるファンの存在だ。自己投影を望むファンたちにとって「敗者」は忌み嫌われる。それぞれ立場が異なるこの3者はしかし、精神疾患から目を背けようとすることで一致している――これが、現場で診療を行ってきたメルクサー氏の実感なのだ。

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最終更新:11/10(日) 19:58
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