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行動経済学を学ぶことで「望ましい行動」を促すことができる

11/10(日) 8:00配信

Book Bang

 物事を設計するのに生物学や化学や物理学の知見は欠かせないのに、経済学の知見を元に設計したカラクリはどうしてああも現実に即さないのか。その苛立ちのピークは、いわゆるノーベル経済学賞受賞者たちが設立したファンド、LCTMが破綻した前世紀末あたりだったろうか。

 なぜ経済学が役に立たなかったかといえば、正しいモデルを採用していなかったからだ。牛を球どころか地球や月を点と仮定しても物理学者たちがその軌道を正しく予測できたのは質点というモデルが正しかったからだが、経済学が長らく採用していた合理的な経済人(ホモエコノミカス)は人のモデルとしては明らかに間違っていた。期待値を最大化するというのであれば、なぜほとんどの人は胴元ではなく博徒となるのか? 

 モデルの予測と現実が一致しなければ、モデルを直すのが科学のイロハのイであるが、経済学者たちが行動に出たのはやっと今世紀に入ってから。『行動経済学の使い方』(大竹文雄)の著者らが行動経済学会を設立したのは2007年のことである。まだ20年にも満たないが、その成果はすでに大きい。「人の意思決定は合理的なものから予測可能な形でずれる」のであれば、その予測を使ってより望ましい行動を促すことも出来るのだ。これをナッジ(Nudges)という。最も効率的なナッジは本書で行動経済学を学ぶこと自体であろう。と、この場を借りて賢明な読者諸氏をナッジさせていただく。

[レビュアー]小飼弾

新潮社 週刊新潮 2019年11月7日号 掲載

新潮社

最終更新:11/10(日) 8:00
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