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サービス残業、有給取得拒否、飲み会参加強制…ブラック労働は「現代の奴隷」と言えるか【ブックレビュー】

11/11(月) 7:05配信

FINDERS

現代日本にも存在する奴隷制、賛否両論の歴史

奴隷制はかつて存在したもので、今は存在しないシステムだろうか? 植村邦彦『隠された奴隷制』(集英社)では、奴隷制が脈々と存続している事実を明らかにする。その場所は、貧困国・発展途上国だけではなく日本も例外ではない。現代日本に奴隷制的状況が偏在していることを、著者は奴隷制の歴史を振り返りながら浮き彫りにしていく。

「隠された奴隷制」というからには、隠されているのは奴隷制だとしても、何がどのような意味でそれを「隠して」いるというのだろうか。そして、ヨーロッパの賃金労働者が「隠された奴隷制」に囚われているのだとしたら、現代の私たちも「隠された奴隷制」の中にいるのだろうか。(P8)

この「隠された奴隷制」という言い回しは、資本家階級による労働者階級の搾取について論じたと一般的に認知されている、カール・マルクスによる大著『資本論』に登場する。この言葉に違和感をおぼえ、著者は一般的な『資本論』の解釈をさらに深めようとした。関西大学経済学部で教鞭をとり社会思想史を専門とする著者は、ロック、ルソー、モンテスキュー、ヴォルテール、アダム・スミス、ヘーゲルといった歴史に名を残す思想家たちが、奴隷制をどう受け止めていたかを振り返る。

本書を読みすすめると、教科書に「いい人」として載っているモンテスキューが、あからさまな黒人差別をしていることに驚くかもしれない。1755年に起きたリスボン地震で未曾有の大災害を経たヨーロッパを見聞したヴォルテールによる『カンディード、あるいは楽天主義説』で、奴隷制という常識を疑ってかかり、世の不条理に目を向けているヴォルテールの姿に時代を超越して感銘を受けるかもしれない。そのように本書の半分以上は、執筆のきっかけとなったマルクスを含め、思想家たちの主張・立場の整理にページが割かれている。専門用語も多いが、ぜひ辛抱強く読んでほしい。すると、奴隷制というシステムが、世の中の不条理と呼応して変幻自在に姿を変えてきた仕組みであることが、歴史的裏付けをもとに確信できるようになる。

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最終更新:11/11(月) 7:05
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