ここから本文です

『デススト』小島秀夫監督に聞く“映画とゲームの垣根” 「僕はその橋渡しをしないといけない世代」

11/11(月) 16:07配信

リアルサウンド

 11月8日に発売された、“小島監督”こと小島秀夫氏率いるコジマプロダクションによるPlayStation(R)4用ソフト『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』。同作について、11月10日に都内某所にて「『DEATH STRANDING』World Strand Tour 2019 TOKYO」が行なわれ、リアルサウンドテックでは同イベント後の合同インタビューに参加。彼がこの日認定を受けた2つのギネス世界記録や、発売したばかりの『DEATH STRANDING』について、“映画とゲームの垣根”や“死生観”、”月”、“ナラティブであること”といった様々な話題から、ゲームクリア後についての話も飛び出した。(編集部)

【写真】マッツ・ミケルセンやノーマン・リーダスも出演するゲーム画面はこちら

※以下、『DEATH STRANDING』のネタバレ要素あり

・ゲームと映画の垣根は無くなって、繋がった一つの大地になる

ーー「Twitterのフォロワー数が最も多いゲームディレクター(2,813,385/11月8日時点)」と「Instagramのフォロワー数が最も多いゲームディレクター(888,539/11月8日時点)」のギネス世界記録認定、おめでとうございます。これを受けて、今後はどのような内容を発信していきたいと思いますか?

小島秀夫(以下、小島):2008年にも「ステルス要素を完全に取り入れた最初のビデオゲーム」として、ギネス世界記録に認定していただいたんですけど、今回もありがたいです。SNSって諸刃の剣というか、使い方次第のものだと思うんです。社会や世界と繋がれるという意味で、使っているぶんには悪くない。僕の場合は、本や映画のことについて呟くと、僕のファンが拡散してくれて、最終的には作家さんや映画監督に届いて、繋がれたりもする。SNSが本来持っているパワーはポジティブなものなので、今回(『DEATH STRANDING』で)は、“繋がり”という良さをみなさんにより拡散していきたいと思います。結構、Twitterには疲れてきてたんですけど……頑張ります。

ーーワールドツアー中に『DEATH STRANDING』の発売を迎えて、プレイヤーの声も届いていると思います。

小島:「間接的に繋がる」というコンセプトのゲームで、ヘッドショットばっかりしているゲームに対して、それはどうなのかな……と思って問いかけをしてみたんですけど、(『DEATH STRANDING』のような)緩い繋がりのほうがいい、と言ってくれる人が想像以上にいて驚きました。特に日本のユーザーが多い、という印象ですが。

ーー日本のユーザーと海外のユーザーで違う点というのは?

小島:やっぱり、今って“個の時代”じゃないですか。個人が自由にいろんなことができて……「俺が強い」と誇示できたり。ゲームがその象徴でもあると思うんです。そういう世界的な風潮とは真逆の方向に向かっているので、国によって受け入れられ方は違いますね。

ーー今回のイベントでは、大塚明夫さんの涙が特に印象的でしたが、率直な感想を教えてください。

小島:約4年ぶりの新作で、ワールドツアーは10年ぶりくらい。パリとロンドン、ベルリン、ニューヨーク、サンフランシスコ、東京ときて、「繋がろう」と言っているんですけど、ネットを通じて繋がるよりも、実際に会うのが一番だなと思いました。フォトセッションやサイン会をして、お互いの気持ちを交換することは、しばらくやっていなかったんです。初めて会う人たちばかりなのに、握手して体温を感じて、人間って本来、そういうものが必要なんだなって感じました。日本の方とは普段肩を組んだりして写真は撮れませんけど、今回はやってみました(笑)。

ーー今回はノーマン・リーダスやマッツ・ミケルセンなど、著名な映画俳優が続々出演しています。小島監督にとって映画とゲームの垣根について、どのように考えているのか教えてください。

小島:ゲームと映画は本来、インタラクティブでデジタルなゲームと、そうでないフィルムという意味で180度違うものだったんですよ。でも、フィルムもデジタルになって、将来はストリームという同じ場所に集まることになる。もちろん映画にはスクリーンというものもあるし、今のゲームも残るんですけど、どちらでもないデジタルのエンタテインメントも出てくると思います。映画とゲームって、途中までどちらのプロセスも一緒なんですよ。世界観を作ったり、オーディオを作ったり、それこそ、パフォーマンスキャプチャーなんてMCUでもやっていることですし。途中まで同じテクノロジーも使うわけなので、同じクリエイターやキャストがそのストリームのなかに入ってくる。結果、垣根は無くなって繋がった一つの大地になるというか。僕はその橋渡しをしないといけない世代だと思いますし、5年~10年するとそういう議論はなくなるかもしれません。

ーー『DEATH STRANDING』は新しいゲーム体験だと思いました。監督的に一番チャレンジだと思ったことは?

小島:色んな要素で、何百というメカニズムのうえで成り立ってるゲームなんですけど、やっぱりステルス(『メタルギアソリッド』)の時もそうだったんですが、新しいものは形がないとわからないんですよ。言葉で説明したり絵を描いたり……僕の頭の中を見せるわけにはいかないので、最初は一緒に作っているスタッフに理解してもらうのが大変で。「とにかく信じてください」ということで作り出して、ある程度まで出来上がってくるとわかってくるんです。

 例えば「いいね!」を押せる機能についても「なんでネガティブな反応はできないんですか?」と言われたり、その行動自体がお金やアイテムとして返ってこない、という点がなかなか同意してもらえませんでした。「ゲームは自分にとってメリットがないと動かない」というのをスタッフから言われて、「それをやってしまうと普通のゲームじゃないの?」と反論したり(笑)。「ポジティブは無償の愛なんや!」ということを言って、ずっと作ってきたんですけど、1年半くらい経ってからようやく見えてきたんですよね。

ーーゲームをプレイしていて、エジプトの死生観が一部の話に出てくるのが印象的でした。それを一つの例に挙げたのはなぜでしょう。

小島:毎週博物館などに行ったりして、そういう文化について学ぶのが好きなんですけど、東洋と西洋の死生観って違うじゃないですか。全世界のあらゆる死生観を入れるようにはしています。そもそも生命が生まれて、進化していって、ある時点で「死」を確認して、宗教が生まれていったわけです。そのなかで、エジプトでは、死んだものが帰ってくるためにピラミッドを作るようになった。生と死という概念が生まれたのは人類の誇りでもあるので、そこの部分にもフォーカスを当てています。ほかにも、インカ帝国のことだったり。ヒックスのコスチュームにもそういう部分を表現していたりするんですが、基本的には知りたい人だけ知れるようにアーカイブしています。

ーー『DEATH STRANDING』を作り始める前に、月面に関するツイートをしていて、トレーラーでも「月」が印象的に使われているのが気になりました。

小島:僕、空を飛べない人間が飛行機を作ったように、不可能の7割は可能だと思っているんですよ。できないことはあって、それを諦めると評価はされないし、それを超えるために知恵を使うわけじゃないですか。その方法はまともじゃなくても良くて、それがゲームデザインということだと思うんです。今から約50年前に、3人のアメリカ人が何千人のサポーターを得て、9日間の旅を終えて生きたまま帰ってきましたよね。嘘かもしれませんけど(笑)。でも、50年前に人類が月に行ってるんだったら、なんでもできるような気がしていて。クリフの台詞はそういう意味合いの言葉になっています。

ーーここまでオープンワールド的なゲームではあるのに、ナラティブなゲームでもあると感じました。どちらかに偏りすぎると崩壊してしまうという意味で、すごく難しい塩梅だったと思いますが。

小島:ゲームとストーリーテリングって、相性が良くないんですよ。マルチエンディングのゲームも好きなんですけど、僕はストーリーじゃないと思っていて。ある一本の運命があって、例えば「何があっても彼氏と彼女は別れる」というのがストーリーで、「右に行くと別れる、左に行くと別れない」というのはストーリーテリングではない。『DEATH STRANDING』はオープンワールドなゲームだからこそ、自由度がないと意味がないじゃないですか。僕は1本のストーリーを作ったうえで、AからBに、BからCにつないでいくんですけど、そのルートを自由にしたんです。AからCにもAからDにも行かないかわりに、AとBの間では山を登っても川を渡ってもいいという。東京→渋谷→上野というルートは決まっているけど、タクシーを使っても電車を使ってもいいし、どこかで休憩してもいい。そういったオープンワールドの醍醐味を使っただけで、すごいストーリーテリングをしたわけではないんですよ(笑)。

ーーゲームには人を殺すことができるものが多いですが、『DEATH STRANDING』では殺傷に対するペナルティがあります。

小島:僕は「棒」と「縄」の話をよくするんですけど(安部公房『なわ』からの引用)、人類は最初四つ足で、二足歩行になって最初に作った道具は棒なんです。これで嫌なものを遠ざける。その次に縄を発明して、好きなものを繋ぎとめることを覚えた。この2つで今の世界があって、握手すると「縄」で、グーでパンチすると「棒」なわけです。その両面が人間の持って生まれた宿命で、どう使うかが僕たちに任されている。そういったなかで、殺傷をポジティブにすることは、ゲームのテーマに沿っていないなって。あまりそこを意識しすぎているわけではないです。

ーーゲーム中では、通常の人間の目には映らない霊体的な存在「BT」のなかに、赤ん坊の姿があるのが気になりました。

小島:BTにもいろんなバリエーションを作りたかったんですけど、制限もあって今の形になっています。赤ちゃんのまま死んだ人もいるから、ということでもありますし、BB(ブリッジ・ベイビー)のメタファーでもあると捉えてください。

ーーゲームクリア後、任務を続けたり他のユーザーと繋がりたいという人もいると思います。そんなユーザーに向けて用意してるものはありますか?

小島:DLC(ダウンロード・コンテンツ)の予定は、今のところないです。最後まで終わった方いますか?

(記者の一人が手を上げる)

小島:だったらわかると思うんですけど(笑)、ストーリーが終わったあとも配達任務は続くんです。プレッパーズも隠れている人はいますし、プレイヤー同士のミッションは十分あるので、ストーリーがなくなったとしても遊べるようにはなっています。

中村拓海

最終更新:11/11(月) 16:07
リアルサウンド

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事