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大量死ウイルスが拡大、北極の海氷減少で? 研究

11/12(火) 7:11配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

海洋哺乳類のジステンパーウイルスが大西洋から北太平洋へ、科学者らが懸念

 2004年に米アラスカ州で、アザラシジステンパーウイルス(PDV)に感染しているラッコが発見されたとき、科学者たちは困惑した。

ギャラリー:アザラシとアシカの見逃せない写真 11点

 PDVは麻疹(はしか)ウイルスと同じモルビリウイルス属の病原体だ。だが、PDVに感染した動物は当時、ヨーロッパと北米大陸の東岸でしか見つかっておらず、西岸のアラスカでは確認されていなかった。

「大西洋のウイルスがどのようにして(太平洋側である)アラスカのラッコに感染したのか、わかりませんでした。ラッコの生息域は広くないからです」と、病原体が海の生態系を移動する仕組みを調べている米カリフォルニア大学デービス校のトレーシー・ゴールドスタイン氏は振り返る。

 そこで、氏の研究チームが2001~2016年の15年分のデータを使って分析したところ、PDV感染の拡大と北極海の海氷の減少との間に、相関関係があるという論文が11月7日付けの学術誌「Scientific Reports」に発表された。北極海の海氷が解けた結果、PDVに感染した動物が北極海を移動できるようになり、北太平洋にまでウイルスが持ち込まれた可能性があるという。気候変動が、病気の新たな感染経路を生むおそれがあることを示す研究結果だ。

ヨーロッパから北米へ

 PDVは1988年に初めて検出された。このときヨーロッパ北部で約1万8000頭のアザラシやアシカが死に、その多くはゼニガタアザラシだった。同様の流行は2002年にも発生している。

 PDVがどこで生じたかは不明だ。最初に北極地方で発生したことを示唆する研究もあるが、別の種類のジステンパーウイルスは多くの動物で見つかっている。ペットの犬は世界各地で、定期的に犬ジステンパーの予防接種を受けている。

 アザラシジステンパーでは、犬の場合と同様、呼吸困難、鼻水、目やに、発熱などの症状が出る。海洋哺乳類の場合は泳ぐのが困難になる。

 PDVは、感染した動物またはその排泄物に触れることで広がる。

「このウイルスは、海洋哺乳類の間で非常に容易に広がることがわかっています」と米カリフォルニア州にある海洋哺乳類センターの獣医学部門長ショーン・ジョンソン氏は言う。

 米国の東海岸沿いでは、2006年に初めてPDVの大流行が発生した。米海洋大気局(NOAA)によると、2018年から19年にかけても、米国北東部にあたるメーン州からバージニア州までの海岸で、アザラシの異常な大量死が確認されている。検査の結果、PDVが主な原因であることが明らかになった。

 ゴールドスタイン氏らは、PDVがいつ、どのようにヨーロッパ北部からアラスカ沖の北太平洋に広がったかを明らかにするため、少なくとも1年のうちの一時期を北極の氷の上で過ごすアザラシや、その他海洋哺乳類から採取したサンプルを調査した。その数は、生きている個体2530頭と死んだ個体165頭におよぶ。それから、北極海の海氷が毎年どこまで広がったかを示すデータを検証した。すると、海氷があまり広がらなかった年は、その翌年にPDV感染が増えていることがわかった。

 この研究では2016年までのデータが使われているが、それ以降の過去3年間、北極海の海氷は縮小し続けている。

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