野球人口の減少による球児への負担増大。球数制限の議論などが活発に行われるようになってきた今だからこそ、野球界は改めて選手の体と真剣に向き合う必要がある。
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プロ野球、広島東洋カープの石井雅也ヘッドトレーナーとともに、球児の体と真剣に向き合う「THE ANSWER」の連載「球児の未来の身体を考える」。第8回は「データベースボール」について、従来とは少し趣向を変えたテーマだが、AI化されることで野球がどう変わっていくのか。そして球児の傷病予防にどうつながるのか。
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近年、スポーツ界ではデータによる戦略分析などが取り入れられています。もちろん日本のプロ野球界もデータによる戦略立案や選手起用などでデータが活用されています。
こと米国のメジャーリーグでは、3年前ぐらいからドラスティックにデータベースボールが進化しています。言い換えると、選手のプレーをデータとして視覚化し、それを分析処理して実戦や選手指導に取り入れてられています。そのための専門部門も作られ、野球経験があまり無くてもデータサイエンスの能力に優れたスタッフにより運営されています。
特にメジャーリーグで成績上位チームにその傾向が高く、シーズン後半のシリーズに出場するチームほどデータサイエンスを上手く取り入れているようです。
今ではプロ経験の無い20代前半の打撃コーチも出始めると言われています。
最初は一時的なブームだと考えていましたが、技術革新が大きく進み、投球速度や変化量はもちろん、打者のヘッドスピードやスイング軌道をデータ化して、その選手にとってのベストなフォームやスイングをデータサイエンスに基づいてコーチングされていきます。もちろんその他の部門でも大きく進化しているようです。
経験によったコーチングから、今後はデータサイエンスによるコーチングが重要視されてきています。
人は身体の動きを、自分自身の感覚で習得していきます。ひとつの方法として、コーチングされた動きをビデオで確認しながら、実際の動きと自分の身体感覚とをフィットさせていくというやり方があります。これに加えて、自分自身で映像とデータを合わせて見ながら感覚を掴んでいけるような環境整備も進みつつあります。
もちろん日本のプロ野球チームも同じように進化しています。AIも「第3次AIブーム」と言われていますが、こうした動きもブームで終わるのか、さらに大きく進化していくのか興味深いところです。
データサイエンスはともかく、スポーツの種類や競技レベルに限らず、自分自身の感覚と実際の映像を見ながら、身体動作をフィットさせていくという手法は、パフォーマンス向上にはとても有効な手段です。
そして、この技術が傷害予防にも役立つ日も近いでしょう。計測されたデータから、選手の疲労度や傷病リスクを導き出すことが、当たり前になってくると思います。それにより、経験値や感覚だけではなく、データに基づいた指導やエクササイズも可能になると期待しています。もちろんデータだけに偏ってしまうことには注意が必要だと思いますが、近い将来はAIがトレーナーに近い役割を担うようになるかもしれません。
石井雅也
1965年9月3日、広島県生まれ。株式会社広島東洋カープトレーナー部長、ヘッドトレーナー、日本プロ野球トレーナー協会会長。広島東洋カープ、エグザス治療院、JTサンダース、ピープル(現コナミスポーツ)競泳選手パーソナルトレーナー等を経て現在は広島東洋カープトレーナー部長。選手たちの体を支え、2016年からのリーグ3連覇に大きく貢献する。
石井 雅也 / Masaya Ishii
最終更新:11/12(火) 10:46
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