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ラグビー日本代表の指導者トニー・ブラウンが「天才」と言われる訳

11/13(水) 7:02配信

FRIDAY

アイルランド戦、あのムーブ

天才。スポーツライターがすぐに飛びつく言葉だ。もしかしたら週刊誌の編集者も同じかもしれない。

ラグビーW杯 日本代表の「ベストショット」がここに集結!

「彼はサインプレーを考える天才なのです」

ワールドカップへ向けたジャパンの約3年の活動、インサイダーであった人が先日、トニー・ブラウンをそう評した。あっ、現場に生きるラグビー人も我々のように天賦の才をあっさり認めるのか、と、ちょっとだけ安堵した。それから思った。

ジャパンのアタック担当コーチ、元オールブラックスの10番、トニー・ブラウンは、サインプレー考案のやはり天才であって、ラグビーの指導全般における大秀才なのだと。

地球を揺さぶったアイルランド戦。後半18分の左ウイング福岡堅樹のトライ。始まりは相手ミスを誘って得たスクラムである。そこからのムーブ(サインプレー)は完璧に近かった。

ゴール右10m強。交替出場したばかりのハーフ、田中史朗が、左やや前方へ素早く球を持ち出し、背番号12の中村亮土へ。ラック。こんどは田中が右斜め方向に軽く走り、その内に、11番のウイング、7年前には「所属チームなし」の悲哀を味わった陽気な男、レメキロマノラヴァがゴールラインに垂直に駆け込んだ。たちまちゴールポスト前に迫る。

パスはふたつのみ。しかもミスの生じにくい短い距離。実に安全で効果的な仕掛けである。トニー・ブラウンの脳みそのおかげだ。ただちに左を攻めてフィニッシュできた。

天候の変化。審判のかざす札の色は黄なのか赤なのか。切り札の負傷。ワールドカップの真剣勝負の結末はさまざまな条件に左右された。これからもされる。幸運と悲運、必然と偶然は親友みたいに肩を組んでいる。

ただし、なにが起きようと、最終到達点がどこであろうと、また本人がそれを望まなくとも「勝者」と遇される立場がある。

自分の担当領域の優勢によって、ひとつ下のカテゴリーのチームでトップ級の国をやっつけたアシスタントコーチだ。トニー・ブラウンの名は、ジャパンのきらめく攻撃がアイルランドの攻守を凌駕した時点で、ワールドクラスの指導者リストに搭載された。

精密なハンドリング。タックルにさらされながら球をいかすオフロードのスキル。人と球とが空間に同時に湧き出てくるムーブ。見て楽しく、相手にしたら苦しい。

スコットランド戦を控えた10月10日の会見で、注目のコーチは語った。

「ラグビーはめまぐるしく変わっています。そこについていかなくてはならない。常にスキルを改善しながら、プレーを変化させなくては。オフロードや(背中側に回した手で投げる)バックフリップも同様です。限界を押し上げていくのです。ジャパンの選手にはスキルがある。献身的でハードな練習もできる。私たちが求めたらやってのける能力があります。決してまぐれではなく、それだけの鍛錬をしてきたのです」

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最終更新:11/13(水) 11:20
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