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緊張感漲る実際の精神科病棟の中で――映画「閉鎖病棟―それぞれの朝―」 平山秀幸監督インタビュー 全2回【後編】

11/13(水) 7:00配信

キネマ旬報WEB

死刑執行が失敗して生きながらえている男
幻聴に苦しむ元サラリーマン
DVを受ける女子高生……
精神科病棟を舞台に、居場所をなくした人々が、
出会い、癒され、自らの人生へ旅立っていく人間ドラマを
やさしく描き出す渾身の一作
作品が生まれるまでの様々なエピソードを平山秀幸監督に語っていただいた。(全2回【後編】)

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「ものを作る」エネルギーに年齢の差は関係ない

――本作のスタッフは平山一家勢揃いという感じですが、俳優さんはむしろ初めての方が多く、平山組常連は綾田俊樹さん、外波山文明さんくらいですね。
平山 初めての人が多いのは新鮮でしたね。

――時折見せる鶴瓶さんの笑顔が絶品でした。
平山 鶴瓶さんは、例えば、コミカルなシーンでも、表情を作ったり、具体的にコミカルなことをしなくても存在だけでそういうことが表現できる方です。逆に笑った顔に怖い音楽をかけたらホラーにもなる(笑)。その存在感はすごいと思います。いちいちこんな風にやってくださいなんて言わなくても、ちゃんと心得てやってくれる安心感がありました。

――綾野剛、小松菜奈のご両人も、鶴瓶さんの圧倒的存在感に拮抗する力を発揮していい味を出されていたように感じました。まずチュウさん役の綾野さんはいかがでしたか?
平山 原作ではチュウさんは還暦くらいの年齢なんです。映画ができてみたら皆「あっ、チュウさんがいた!」と。見事な綾野剛のチュウさんがいました。

――由紀役の小松菜奈さんは?
平山 小松さんは、年齢的にいうと僕からすると完璧に『宇宙人』なのです(笑)。由紀は10代の設定、彼女の実年齢は撮影時22歳でしたから、会話も通じないだろうし、彼女のことが理解できるだろうかと心配しながら入ったんですが、しっかり『地球人』でした(笑)。

――うまくコミュニケーションとられている感じは画面からも伝わってきます。
平山 『ものを作る』エネルギーをしっかり持っていて、若い俳優さんに「女優さん」と言うのをためらうことが多いのですが、この先、モノ凄く楽しみな「女優さん」です。

――小林聡美さんの婦長さんが印象的ですね。
平山 みなさん、ルイーズ・フレッチャー(「カッコーの巣の上で」1975)を思い出すと言われるんですが(笑)、出番少ないんだけど凛としていていいなあと思いました。「患者さんにやさしくしないでね」とは言いました。撮影したあの病院で一番使ってはいけないのは「大丈夫ですよ」という言葉だそうです。

――なぜ言ってはいけないのですか?
平山 例えば重度の入院患者につい「大丈夫だよ」とか言いがちじゃないですか。でも、気休めめいたことは一切言わない。そういうところはかなりハードボイルドな病院でしたね。

――実際に稼働している独立行政法人国立病院機構小諸高原病院の精神科病棟でロケをされたんですね。
平山 それが大きな力になりました。緊張感が並みじゃなかった。別の病棟には現実の患者さんがいらっしゃるのですから。「監督、よーい、スタートの掛け声は小さい声でね」なんてことも言われましたし、実際に患者さんとすれ違っても特別に意識をしないでくださいと注意されました。それは撮影のルールとして示されていたんです。

――実際にそういう病院で撮影すると、映像に反映される空気感が違いますか?
平山 間違いなく違います。セットだったら確実に別のものになったと思います。

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最終更新:11/13(水) 7:00
キネマ旬報WEB

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