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絶滅と思われたマメジカ、ほぼ30年ぶりに発見

11/14(木) 7:12配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

特徴は背中の銀色の毛、1990年以来の科学的記録

 ベトナム南部の低地で、絶滅が危ぶまれていたきわめて珍しい動物の生きている姿が撮影された。この動物はマメジカの一種、ベトナムマメジカ(学名:Tragulus versicolor)。11月11日付けの学術誌「Nature Ecology & Evolution」で報告された。

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 ベトナムマメジカは、小さな牙を持つ小型のシカのような動物で、ここ30年近く記録がなかった。最後の記録は1990年、ある猟師が仕留め、標本として科学者に寄付したものだった。

「とてもすばらしい動物です。ずっと前から、このマメジカが生き延びている証拠を見つけたいと思っていました」と、今回の論文を執筆したドイツ、ライプニッツ野生動物研究所のアンドリュー・ティルカー氏は話す。同氏は、グローバル・ワイルドライフ・コンサベーションという環境保護団体でも活動している。

 ベトナムマメジカは大型のウサギほどの大きさで、背中が光沢のある銀色の毛で覆われているのが特徴だ。今回撮影された写真には、牙のような歯が写っているものもあった。角はなく、オスは牙が伸びることから、縄張りや繁殖相手をめぐって争う際にこれを使うと考えられている。

 論文に携わった研究者たちは、今回の発見がベトナムマメジカの保護につながることを期待している。このマメジカの主な脅威となっているのは、ワイヤーを用いたわなだ。また、今回マメジカを発見した手法は、他の「失われた種」を見つける際にも役立つ可能性がある。

銀色のマメジカを探して

 調査に当たり、ティルカー氏らが向かったのは、ニャチャンというベトナム南部のビーチリゾートに近い、乾燥した森林だった。1910年にもう一つのベトナムマメジカの標本が得られた場所だ。熱帯雨林におけるそれまでの調査ではまったく見つからなかったため、ベトナムマメジカは乾燥した低木林を好む可能性があると考えた。

「このような森は、ベトナムでよく見る森ではありませんが、私の出身地である米国のテキサス州に似ている低木林があります」とティルカー氏は話す。

 1910年にベトナムマメジカが捕獲された正確な場所は記録されていない。そのため、この一帯にある町を訪れ、地元の猟師など森に詳しい人に、背中が銀色のマメジカを見たことはないかと聞くことから始めた(カンチルマメジカ(Tragulus kanchil)という別のマメジカもいる。こちらはよく目撃されるが、背中は銀色ではない)。

 ベトナムでは、ワイヤーわなを使った密猟が横行しているので、このような聞き取り調査は簡単ではない。今回の調査を率いたグローバル・ワイルドライフ・コンサベーションのアン・グエン氏は、時間をかけて地元の人々の信頼を得なければならなかったと言う。

「それでも、人々はこの5年から10年でどれほどの野生動物が失われたのか、非常に心配しています」とグエン氏は話す。「それが乱獲とわなのせいだとわかっているのです」

 やがて、地元の人々は、最近ベトナムマメジカらしい動物を見たという場所に案内してくれるようになった。2017年11月から2018年7月まで設置したカメラトラップ(自動撮影装置)には、ベトナムマメジカが280回映っていた。ただし、何度も映っている個体もいるため、このあたりに何匹が生息しているのかは判断できなかった。

「カメラトラップを確認し、銀色の毛をもつマメジカを見つけたときは大喜びしてしまいました」とグエン氏は言う。

 ワイヤーわなによって絶滅寸前になっているのは、ベトナムマメジカだけではない。ベトナム固有のシカに似た動物では、サオラ(学名:Pseudoryx nghetinhensis)やオオホエジカ(学名:Muntiacus vuquangensis)も同じ危険にさらされている。

 アジアの一部では野生動物の肉の需要があり、密猟が横行している。その結果、自然環境が残されていても、そこに生息する動物の数は減ってしまう「空白の森症候群」と呼ばれる現象が起きている。その元凶がワイヤーを使ったわなだ。このわなは、森を行き来するほぼすべての動物を見境なく殺してしまう。

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