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冨安健洋と中島翔哉。日本屈指の2つの才能に見る「モダン」の意味

11/14(木) 18:12配信

footballista

現代戦術から読み解く日本のトッププレーヤーたち

これまでは、サッカーの歴史を作り上げてきたレジェンドたちの凄みを日々アップデートされる現代戦術の観点から読み解いてきたこのコーナー。

今回は番外編として、現在の日本のトッププレーヤーたちにフォーカス。月刊フットボリスタ第74号でも特集した「モダンCB」として大きな期待を背負う冨安健洋と、図抜けたスキルとイマジネーションで攻撃を彩る中島翔哉の「スペシャリティ」に焦点を当てよう。

文 西部謙司

“モダン”な冨安健洋

「ユース年代の若手を指導する時には、10年先を見なければならない」

 これはユーゴスラビアサッカー界の大立者ミリヤン・ミリヤニッチの言葉である。例えば、15歳の選手が25歳になった時にサッカーがどう変化しているかを考えて指導しなさいということだ。その時は十分だと思っても、10年後にはそれでは時代から取り残されるかもしれない。10年先を正確に予測することはサッカーに限らず至難の業だろう。ただ、およその方向性は見えているものだ。

 それぞれのポジションには役割があり、それぞれのスペシャルな能力が要求される。ストライカーには得点能力が必要で、CBには空中戦の強さが問われる。一方で、ストライカーにはますます守備力が、CBには攻撃力が求められている。スペシャリストであることを前提に、オールラウンドな能力が求められているわけだ。そして、この傾向はサッカーが競技として始まったころからほぼ変わらない。

 10年先のサッカーがどうなるのかはともかく、選手固有の才能にオールラウンドな能力をどれだけ加えられるかが重要だということはすでにわかっている。

 冨安健洋は10年に1人の人材だろう。井原正巳が登場した時とよく似ている。

 井原は高校時代FWだったが、やがてDFとしてプレーするようになって脚光を浴びた。背が高くパワーに恵まれていて、読みが鋭くスピードもあった。当時のDFとしてはボール扱いも巧かった。この選手なら、どのチームでプレーしても中心になるだろうと思えるほど飛び抜けていた。筑波大学を卒業して日産自動車に加入した井原は、当初MFで起用されている。ボールを刈り取る能力を中盤で使いたかったのだろう。その後は本職のCBとして横浜マリノス(当時)の看板選手になった。

 冨安もMFとしてプレーしている。アビスパ福岡、さらに2019年アジアカップでも初戦はボランチだった。CBの方が向いているとは思うが、MFとしてもプレーできるのは井原と同じ。2人ともハイブリッドなのだ。

 ボローニャでの冨安は右SBでもプレーしている。守備者としての強さ、高さ、速さに加えて、ボールタッチに優れていて長短のパスを正確に配球できる。MFもこなせるだけのスタミナもある。DFとしてのスペシャルな能力に抜きんでていて、さらにMFができるオールラウンド性を備えている。

 現代サッカーにおいて、CBのビルドアップ能力はますます重要になっている。相手からさほどプレッシャーを受けず、意図的に攻撃を構築できる唯一のポジションだからだ。CBの試合を読む力、攻撃の方向性を決めるセンスは、大きな影響力を持つようになった。守備能力だけが優れていても、現代のゲームに要求されているCBの役割はまっとうできない。井原、冨安は従来のDFの規格をはみ出すほどの能力が、後にDFとして要求される役割にちょうどのタイミングでフィットした。

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最終更新:11/14(木) 18:25
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