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日本人が香港デモに無関心のままではいけない理由

11/14(木) 6:00配信

JBpress

 (福島 香織:ジャーナリスト)

 2019年11月9日はベルリンの壁崩壊から30年目。あの東西の激しいイデオロギー対決が終焉するまでの困難と多くの犠牲に世界が思いを馳せていたころ、極東で新たなイデオロギー対立の炎が燃え盛っていた。香港デモである。

【写真を見る】警察に囲まれて袋叩きに遭う香港デモ参加者。

 11月8日、初めてデモの参加の最中に犠牲者が出たことが公式に確認された。デモ参加者の間で警察の暴力に対する怒りが渦巻き、翌9日は犠牲者の追悼のためにより大規模なデモに発展した。

 犠牲者は香港科技大学の22歳の男子学生だった。5日、軍澳の近くで警官隊の催涙ガス弾に追われて駐車場の3階から2階に転落。脳内出血、骨盤骨折で重体となり搬送先の病院で死亡した。警察は警察側に責任はないとしているが、救急車の到着が警察の妨害で少なくとも20分遅れており、香港科技大学の学長は第三者による死因調査と情報公開を求め、警察の責任を問うている。

■ 一線を超えた中国&香港当局の対応

 11月11日にはゼネストが呼びかけられ、デモ隊は交通をマヒさせるためにあらゆる所で交通妨害活動を行った。これに対し、出動した警官の暴力は常軌を逸していた。金融街のあるセントラルでは通勤客を巻き込む形で、高温で毒性の強い中国製の催涙弾を容赦なく打ち込んだ。香港島東部の西湾河では、道路にバリケードを作っていたデモ参加者に向けて、交通警察が実弾を3発発砲。1発が柴湾大学生(21歳)の腹部に当たり腎臓と肝臓を損傷して学生は重体だ。九龍半島側のバス通りで、交通妨害をしていたデモ隊を白バイが轢き殺そうとでもするかのように追い回す映像もネットに上がっていた。

 12日深夜、香港中文大学構内で警官が催涙弾とゴム弾を発射し、60人以上の学生が負傷。デモ隊も火を放って応戦し、キャンパスが戦場となった。

 大学は本来、暗黙の自治権を持つ。副学長、学長らが自ら学生と警察の間に立って交渉にあたり警察の学内侵入を防ごうとしたが、警察は交渉に応じず、大学に突入した。これは香港デモ始まって以来、警察が初めて大学の自治権を犯したということであり、香港の学問の砦が警察の暴力に屈したと国際社会は衝撃を受けた。

 香港中文大学には香港インターネットのエクスチェンジポイント(HKIX)が置かれているという。警察が中文大学を攻撃したのは、こうしたインターネットの拠点を潰すのが狙いか、という見方もでている。

 あらゆる角度からみて、11月に入ってから香港デモに対する中国、香港当局の対応は一線を越えた感がある。

 それは11月4日に林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が習近平国家主席と直接会談し、習近平から「高い信頼」を寄せているとの表明を受けたことと関係があろう。この会談前、一部米国メディアから「林鄭は辞任させられるのではないか」という予想が発せられていたが、どうやら林鄭は行政長官を続投するようである。ただし習近平が内心、林鄭の行政手腕のまずさにイラついていることは仄聞(そくぶん)している。彼女に対する習近平の高評価表明の理由を、四中全会のコミュニケなどからも想像するに、習近平政権は林鄭に全香港市民から末代まで恨まれるような汚れ仕事をさせるつもりではないか。その汚れ仕事というのは、たとえば国家安全条例の施行かもしれないし、あるいは香港基本法18条に基づく人民解放軍介入要請かもしれない、と私は最近本気で不安に思っている。

■ 一般市民にも容赦がない警察の暴力

 そういう瀕死の香港に対して、もう1つ辛い事実は、日本人の誤解と関心のなさである。

 私もたまに日本の民放地上波の番組にゲストコメンテーターとして呼ばれることがあるのだが、日本を代表するコメンテーターたちが香港の現状について「生活に心配のない学生が暴れて、市民の多くが迷惑をこうむっている」といった解釈していたのに愕然とした。そんな単純な話ではない。

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最終更新:11/15(金) 18:15
JBpress

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