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富士フイルムの米ゼロックス買収断念で始まる「事務機」業界大再編

11/14(木) 6:01配信

ダイヤモンド・オンライン

 富士フイルムホールディングが米ゼロックス買収断念を表明した直後に、今度は米ゼロックスが米HPに買収提案した。成熟産業のドキュメント業界で、仁義なき再編の波が起きようとしている。富士フイルムHDが逃した魚は大きいが、百戦錬磨の古森重隆会長兼CEO(最高経営責任者)は、転んでもただでは起きなかった。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

● 商標権、直販エリアを盾にした “消耗戦”の着地点

 1年9カ月もの間停滞していた富士フイルムホールディングス(HD)の米ゼロックス買収劇は5日、急転直下、幕が降りた。

 買収劇の幕が上がったのは2018年1月。内幕は自社株買いや新株発行を組み合わせるスキームで、キャッシュアウトはゼロ。富士フイルムHDに魅力的なスキームだった。それに対して米ゼロックスの大株主、カール・アイカーン氏ら「物言う株主」が米ゼロックスを過小評価していると反発。同年2月に買収差し止め請求訴訟を起こし、5月には米ゼロックスの新経営陣が合意破棄を通告。交渉は暗礁に乗り上げ、商標権や直販エリアを盾にした応酬に(詳細は後述)、「どこに落としどころを見つけるか」の消耗戦に発展していた。

 決まった着地点は、富士ゼロックス株式(富士フイルムHDが75%を保有)の米ゼロックス保有分25%を富士フイルムHDが約2400億円で買い入れて完全子会社化するというもの。これによって1962年以来続いた富士フイルムHDと米ゼロックスの資本関係はなくなった。

 一方、富士フイルムHDは米ゼロックスを相手取って起こしていた損害賠償請求訴訟を取り下げる手続きに入った。併せて両社の新たな協業枠組みを取り決め、欧米市場に富士ゼロックスは自らOEM(相手先ブランドによる生産)供給が可能に。米ゼロックスへの製品供給も少なくとも今後5年間は継続することとなった。

 富士フイルムHDの古森重隆会長兼CEO(最高経営責任者)は今回の着地点について、「率直に言えばベター」と表現しながらも、「元々米ゼロックスからの提案。それに加えて両社の取締役会で、全会一致で判断した」「株式による売買スキームも向こう側からの提案だった」と、節々に悔しさをにじませた。

 古森会長兼CEOの説明通りならば富士フイルムHDに非はなく、混乱を収束するために譲歩した形だ。

 業績不振の米ゼロックスからの救済要求は今回が2度目。1度目の01年は、米ゼロックス持分の株式25%を約1600億円で買い取って富士ゼロックスを連結子会社化。2度目の今回は米ゼロックスの“丸飲み”で応えようとしたが、物言う株主の抵抗に遭って、するりと逃げられた。

 5日の会見で古森会長兼CEOは米ゼロックスの動きを察知していたかのように、「ゼロックスはキャッシュが入るのがメリットじゃないですかね」と発言。その予告通り、米ゼロックスは同日、株式売却益、借入金、自己株式を原資に、パソコンとプリンター大手の米ヒューレット・パッカード(HP)へ買収提案した。米ゼロックスは富士フイルムHDに吸収される“守勢”の業界再編よりも、HPを吸収する“攻勢”の業界再編に社運を賭けたわけだ。富士フイルムHDの助野健児社長兼COO(最高執行責任者)は「コメントする立場にないが、業績に大きな影響はない」と、表面上は静観の構えだ。

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最終更新:11/14(木) 6:01
ダイヤモンド・オンライン

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