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韓国GSOMIA破棄へ、文政権の暴走で日米が被る損害を元駐韓大使が警告

11/14(木) 6:01配信

ダイヤモンド・オンライン

 韓国の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄の期限が23日午前0時に迫っている。米国は、韓国に対しGSOMIA破棄を撤回させようと韓国政府に働きかけているが、韓国大統領官邸の青瓦台は一歩も引くそぶりを見せていない。韓国はこのままGSOMIA破棄に向かうのか。その場合の影響はどうなるのか検証する。

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● 韓国ではもともとGSOMIAに対し抵抗があった

 日本と韓国は2016年11月23日、軍事秘密情報を提供し合う際に第三国への漏えいを防止するため、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を締結した。同協定は2011年より実務者間で交渉が進められ、2012年6月29日に締結される予定であったが、署名の1時間前に突如、韓国の国会より「待った」をかけられ、延期となった。

 GSOMIAは国会の同意が必要な協定ではなく、行政機関同士の合意で締結できるものである。しかし韓国側は、日本は他の国と異なる扱いをする。日本は韓国を併合した経緯があり、国民感情として軍事協定を安易に容認できるものではないので、国会で論議してからでないと署名ができないというのが、延期申し入れの理由だった。

 ところが当時は、北朝鮮の核ミサイル開発が急速に進み、当時の朴槿恵政権は「金正恩朝鮮労働党委員長はルビコン川を渡った」と非難するような状況だった。それを受けて16年に交渉が再開され、締結されたものだった。ただ締結された時点で朴政権が国民からの支持を失い、レームダックとなっていたため、そこには国民の意思が反映されていないとの思いが韓国国内には常にあった。

● GSOMIAはどのような役割を果たしているか

 日韓のGSOMIAに基づく平時の情報共有では、韓国にとって最重要なものは日本の自衛隊のミサイル航跡分析情報である。

 日本は新潟県と鳥取県の通信所で北朝鮮の電波情報を傍受しており、海上自衛隊のEP-3電子戦データ収集機でも電波情報を収集している。これにより、北朝鮮軍の動きが監視できる。

 また、日本側は情報収集衛星5基、地上レーダー4基、イージス艦6隻、早期警報機7台などを持っており、蓄積した情報資料と照合するなど、緻密な分析を行っている。

 一方韓国側には、休戦ラインでの監視、地上設置レーダー、電波傍受施設、航空機や艦艇による偵察監視がある。北朝鮮については、より距離的に近い韓国の方が、情報収集する上で有利な面がある。

 北朝鮮がミサイルを発射した場合、日本側のレーダーがその航跡を捉えるのは、見通し線(直進レーダー波が地球の丸みでも届く直線)上にミサイルが上昇した後となる。韓国側のイージス艦の方が近くに進出している可能性があり、その場合、韓国艦が最初に北朝鮮を追跡し、その後日本のイージス艦も追跡することになる。

 ただ、先日発射された北朝鮮の短距離ミサイルについては、韓国側は日本から得たデータを基に当初、飛行距離が430kmとしていたのを、実際には600kmであったと修正している。総じて、GSOMIAから得られるメリットは韓国側の方が大きいとみられている

 日韓の軍事情報共有はまだ日が浅く、機敏な情報分野では、時間をかけて信頼関係を構築していく必要がある。将来的により緊密な情報共有が期待されるものとしては、韓国側の脱北者などの人間を通じた情報であり、これには拉致被害者関連も含まれるが、まだこの分野での情報交流はそれほど活発にはなっていない。

 いずれにせよ、GSOMIAが破棄されても、現時点で日韓両国が被る被害はそれほど大きくはなさそうである。ただ、北朝鮮の脅威を考えると最善の防衛体制構築が急務であり、韓国のGSOMIA破棄は、韓国の「安保不感症」を実証するものである。

● なぜ米国が韓国のGSOMIA破棄に怒りを表すのか

 韓国政府は、「GSOMIAが終了しても、2014年に締結された「韓米日防衛機密情報共有のための覚書(TISA)」があるため軍事情報共有に問題ないと言っているが、米国のミサイル防衛局のヒル局長は、TISAは日韓の軍事情報を交換する最善の方法ではない」と否定している。

 仮に日本と韓国が同盟関係になく、日韓でGSOMIAが締結されていない状況になれば、日米、米韓での軍事行動の際に、軍事情報の保護する協定に参加していない国の保有する機密情報を使うことができない。これは、米国の極東戦略にとって重要な問題である。日韓GSOMIAの締結は日韓ばかりでなく、日米韓3ヵ国にとって重要なものなのだ。

 このように、GSOMIAの破棄は、米韓及び日韓の共同作戦に支障をきたすことになる。そもそもこの協定を橋渡ししたのは米国である。米国にとって日韓のGSOMIAは単なる2国間の軍事協定ではなく、東アジアで、米国を中心に日米韓が共同で中朝に対処する大きな枠組みである。

 有事の際には、米軍と韓国軍、米軍と自衛隊は速やかに共同で軍事作戦を実行する。そして、共同作戦を行うに当たっては、米軍は独自に入手した情報に、日本や韓国から得た情報を全て加えて作戦を立案する。その際の情報は「日本から得たものだから、日米共同作戦にしか使用しない」といった区別はしない。GSOMIAは米軍が日韓間で得た情報と、韓米間で得た情報を、垣根なしに共同作戦に使えるようにするものである。

 日韓に軍事協定がないと、公式に日米韓の共同作戦ができないことになる。韓国のGSOMIA破棄を最も警戒しているのは米国であるともいえる。

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最終更新:11/14(木) 6:01
ダイヤモンド・オンライン

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