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「IT技術」が、今ひとつ不動産業界を変革しきれない背景とは?

11/15(金) 12:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

不動産投資アドバイザーでCFPファイナンシャルプランナーの大林弘道氏の著書、『儲ける不動産ビジネス 7つの新規事業アイディア』より一部を抜粋し、投資をはじめとした不動産ビジネスをめぐる課題を解決するための具体的なアイデアを提案していきます。

ブームを巻き起こした「セカンドライフ」が廃れた理由

10年くらい前に、「セカンドライフ」というオンラインゲームが流行ったのを覚えていますでしょうか。

バーチャルの都市空間で自分の分身が第2の人生を楽しむというものです。現実さながらのビジネス、恋愛、消費行動も可能で、専用の通貨(リンデンドル)も存在していました。しかも現実のお金(米ドル)とも交換可能で、仮想の「渋谷」や「六本木」の土地取引で巨額の利益を得た人のニュースは、社会的にも話題になりました。

大手企業が「セカンドライフ支店」を出店していたくらいブームになったのですが、いつの間にか廃れていってしまいました。その理由は様々言われていますが、結局のところ、第2の人生として没入できるほどのクオリティではなかったということでしょう。参加方法、使用言語、画面解像度、キャラの可愛さ、プレーヤーの数…など、リアリティに乏しければ、没入感を得られずに飽きられてしまうのです。

それから技術革新が進んだ現在、仮想現実(VR)の技術を不動産業にも活かそうという機運が高まっています。「遠隔地にいながら室内見学ができる」とか、「リフォーム後の完成イメージを掴める」というものですが、残念ながら、今ひとつブレイクしていません。

これは人間の脳がそこに映された景色を「現実のように見えるが本質は異なる」と認識してしまうため、不動産に関わる重要な意思決定をしにくいからと考えられます。仮想と現実との間に「本当の景色は違う」という判断が割り込む余地がないくらいに高いクオリティをもったVRが必要であるとすれば、もうすこし時間がかかるでしょう。

「IoT」と不動産ビジネスの相性はとても良いが…

「セカイカメラ」はご存じでしょうか、こちらは拡張現実(AR)の話です。VRが仮想の世界を映し出すのに対し、ARとは現実空間にデジタル情報を付加して映し出すものです。iPhoneに「セカイカメラ」アプリをダウンロードして、あるレストランを見ると、そのお店の営業情報や評価がラベリングされて映ります。

私も不動産の売買営業をしていたとき、「セカイカメラ」を使ってみました。お客様を現地で物件案内している時に、提案しているマンションの過去の売買事例や、現在の売出し事例が一緒に映り込んでくるので、リアルタイムですごく説得力のある営業ができ、感動したくらいです。

この「セカイカメラ」も今はありません。膨大な情報量を制御できず、オーバーフローしてしまったこと、それを整理するためにエネルギーを費やすほど、マーケットのニーズと文化がなかったことが原因と考えられています。技術的な問題はクリアできるであろう今、ARはVRよりも大きなポテンシャルを有しているかもしれません。実際、社会的にもARの普及が進んでおり、ドライバーの運転補助や、医師の手術技能向上など、様々な産業分野でARを用いたサービスが芽生えてきています。不動産分野における「セカイカメラ」の復活も待ち遠しいところです。

またITは既存サービスだけでなく、モノとも融合しました。「IoT」と呼ばれるもので、外出先からエアコンをON・OFFしたり、トイレで体調管理をしたりできる時代です。どんどん暮らしを便利にしていく「IoT」は、もっぱら「住まい」「ライフスタイル」において機能するため、不動産ビジネスとの相性はとても高いのです。AIスピーカー付きの賃貸住宅が増えてきているのも顕著な例でしょう。不動産賃貸業もリーシングの差別化において、eコマース企業と何かを開発していくことを求められることも遠くないのです。

このように技術革新は、情報伝達の方法やライフスタイルを快適にするアイテムを作り出していきましたが、不動産の取引方法にあらたな仕組みをもたらすには至っていません。

不動産という財の個別性、希少性、秘匿性といった特徴と日本人のメンタリティが壁となっているとすれば、限界もあるでしょう。ディープラーニングが何かを提示しても参考情報の域を出ません。

本連載でキーファクターとして掲げている「流動性」について、ITをもって何かのインパクトを与えることができるようになれば、新たな展開が生まれるかもしれません。興味をもって見守っていきたいですね。

大林 弘道

最終更新:11/15(金) 12:00
幻冬舎ゴールドオンライン

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