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日本だけじゃない? ドイツ極右政党が「リベラル、左翼的」な芸術への攻撃を強める理由

11/16(土) 10:00配信

クーリエ・ジャポン

「表現の自由」と「政治」

現代アートの祭典「あいちトリエンナーレ2019」で議論を呼んだ表現の自由。昭和天皇の写真を燃やす映像や、慰安婦を想起させる少女像などが展示に含まれていたことから、撤去を求める抗議や脅迫やテロ予告が相次ぎ、安全措置としてわずか3日で中止となった一連の出来事は、まだ記憶に新しい。

その後、展示は再開したものの、この一件で「表現の自由」と「政治」をめぐる日本の現状が浮かび上がった。国際芸術祭の中の一展示であるとはいえ、わずか3日で展示中止になったことは、文化史に残る事件といえる。

騒動の背景には行政の検閲ともいえる発言がある。名古屋市長による「日本人の心を踏みにじるようなもの」という発言だ。また、文化庁の「あいちトリエンナーレ」への補助金不交付の決定も大きな議論を呼んだ。

往々にして、アートは検閲との戦いであることが少なくないが、奇しくも、これとよく似た事態がドイツでも起こっている。

「ナチス非常事態」が出されて…

近年のドイツにおける変化の一つに、右翼ポピュリスト政党の台頭がある。ナチス政権という苦い過去を持つことから、戦後これまで極端な右翼ポピュリスト政党が存在してこなかったドイツでも、2013年に結成された「ドイツのための選択肢」(Alternative für Deutschland,以下 AfD)が支持を広げ、17年9月の選挙では連邦議会に進出した。

戦後の西欧諸国において、特にドイツにおいては露骨な排外主義をかかげ、ナチスを崇拝するような「極右」政党は世間から危険視されてきた。そういった世間一般の反レイシズム、反ファシズムの規範が極右の台頭を抑止する作用を果たしてきたところもある。

それが一転。

ドイツの極右勢力が大きくなるにつれ、「自国民優先」を掲げ、難民や移民の大量流入への抗議をエスカレートさせている。今年6月には難民支援を訴えた政治家が殺害され、ドイツ東部のドレスデン市は先月「ナチス(Nazi)非常事態」を宣言。リベラル派の政界や言論界を標的にした脅迫行為が横行しており、「その攻撃の矛先は文化施設にも及んでいる」と「アトランティック」誌は報じている。

標的となっているのは、AfDが本質的にリベラル、左翼的だとみなす文化施設であり、「劇場や美術館から出版社や歴史的モニュメントまで」と幅広い。

AfDを右翼ポピュリスト政党として風刺する作品を展示・上演するドイツ国内の施設を名誉毀損で訴え、また同様の風刺作品を上演する劇場ディレクターを「演目を外さなければ法的措置をとる」と脅していることや、移民アーティスト作品の批判、ホロコースト記念碑をこき下ろすなどの圧力をかける様子を同誌は報じている。

そういった圧力は国内の大学にも及んでおり、フライベルクの大学内の劇場で開催予定だった右派ポピュリズムについての朗読・座談会を「左派・環境主義のイデオロギーを押し付けるものだ」として非難。その後、同校内での政治イベントの開催が禁止される事態となっている。

ドイツ東部の街ドレスデンでは、AfDはシリア系ドイツ人アーティストの作品を公共の場に展示することへの抗議運動に参加。

また、AfDメンバーは、首都ベルリンの劇場ディレクターがAfDを非難したことから、同劇場への補助金カットを連邦議会へ要求。このこととの関連性については不明だが、「2日前には同劇場に爆破予告の脅迫もあった」と同誌は報じている。

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最終更新:11/16(土) 10:00
クーリエ・ジャポン

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