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【著者に訊け】田中里尚氏/『リクルートスーツの社会史』

11/16(土) 16:00配信

NEWS ポストセブン

【著者に訊け】田中里尚氏/『リクルートスーツの社会史』/3600円+税/青土社

〈ある人は「就活」学生の制服と言い、ある人は日本的無個性の象徴と言い、ある人は同調圧力の強い日本の社会を表象するものと言う〉──。そう、『リクルートスーツの社会史』である。

 著者・田中里尚氏は現在文化学園大学准教授を務め、戦後の服飾文化や女性誌の歴史、それを取り巻く人々の意識の変遷を研究。本書でも〈そこに堂々とありながらも、誰にも関心をもたれず、気にも留められない〉リクルートスーツはエドガー・アラン・ポー作『盗まれた手紙』の手紙のようなもので、〈このような存在を明瞭にするには、存在よりもその周辺にある言論や行動に着目した方が、より事態は可視的になる〉とする。

 実はリクルートスーツという商品自体、従来の紳士服カテゴリーには存在せず、その現象が登場したのも就職協定(1972年~)確立から5年が経った1977年頃だとか。以来毎年季節になると紺や黒のスーツ姿の学生が増殖する謎について、私たちは確かに、無頓着すぎた?

「私は元々小説家志望でしたが文芸専修ではなく史学科に進み、そこで女性史から女性誌や服飾史に興味を持ちました。なのでリクルートスーツの専門家というわけではないんです。

 例えば就職指南書によくある〈常識の範囲内〉とか〈清潔感〉という定義自体の曖昧さに興味を持ち、着装規範を巡って、スーツの王道は紺だとか三つ釦(ボタン)がどうとか、それらしい一線をみんなで探ってきたのがリクルートスーツの歴史とも言えます。そもそもオシャレって何? とか、常識って何? とか、人間の行動規範や言葉の問題に、私は興味があるんです」

 リクルート+スーツがさらに簡略化されたリクスー。本書ではこの奇妙な造語が2000年代に誕生する遥か以前、つまり明治期に洋装が奨励され、元は男子の正装に対する平服だった背広が大人の仕事着として定着する経緯を遡る。その上で、各時代の就活シーンを巡る言説を具(つぶさ)に検証していく。

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最終更新:11/16(土) 16:32
NEWS ポストセブン

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