ここから本文です

山崎まさよし「泥棒だって人間だよ、ということが伝わればいいなと思います」

11/16(土) 11:00配信

文春オンライン

 14年ぶりに長篇映画に主演する山崎まさよしさん。約20年前、初主演映画『月とキャベツ』でコンビを組んだ篠原哲雄監督との再タッグだ。演じるのは、ミステリー界の巨匠・横山秀夫の連作短篇集『影踏み』の主人公・真壁修一。司法試験を目指していたが、学生時代のある事件をきっかけに泥棒として生きるようになったダークヒーローだ。

【写真】この記事の写真を見る

「もともと、横山さんの小説の大ファンだったんです。文体のスピード感が気持ちよくて、どんどん引き込まれるし、痛快です。また、ミステリーとして犯人を捜すだけでなく、普通は光の当たらない場所や人のことがしっかり描かれていると思います。

 初めて横山さんにお会いしたのは、『月とキャベツ』のロケ地だった群馬県で毎年開かれている『伊参(いさま)スタジオ映画祭』というイベントです。群馬出身の小説家として横山さんがゲストで呼ばれていて、ずっとお会いしてみたかったので、挨拶に行きました。元新聞記者の方ですし、小説が硬質な文体なので、怖い人なのかなとひそかに思っていたのですが、穏やかで、柔らかい物腰の方でした」

 篠原監督も参加していたこの映画祭がきっかけで、意気投合した3人は、自然と映画を作る流れになったという。その後、横山氏側から候補として提案されたのが『影踏み』だった。

「横山さんの小説は、警察組織に属する、いわば『官』の人が描かれる小説が多いですが、『影踏み』は唯一『民』の人間、しかも泥棒というアウトローが主人公です。僕自身は、どこにも属さずに生きてきた人間です。自分は『民』の人間で、税金をきちんと払いつつ、フリーの立場で権力に対抗している、という意識がどこかにあります。医者や弁護士を演じるのは無理だけど、泥棒なら演じられるかも、と思いました。泥棒をしたことはないけど、一種の職人気質を持つ男と考えれば、ミュージシャンである自分にも想像できる面はあるのかなと。泥棒が主人公の映画は異色かもしれませんが、泥棒だって人間だよ、ということが伝わったらいいなと思います」

 山崎さん演じる真壁は、深夜、寝静まった民家に侵入して現金を盗み出す「ノビ師」と言われる凄腕の泥棒だ。ある夜、侵入した県議会議員の家で、妻が議員の夫に火を放とうとしている場面を目撃する。直後、まだ通報もされていないのになぜか現れた幼馴染の刑事・吉川(竹原ピストル)によって逮捕されてしまう。2年の刑期を終え出所した真壁は、啓二(北村匠海)という若者に出迎えられる。翌日、吉川が溺死体で見つかった。事件当時の所在を問われた真壁は、咄嗟に恋人・久子(尾野真千子)の名前を出す。久子は真壁を一途に思い続ける一方で、文具店を営む男(滝藤賢一)に求婚されていた。真壁は2年前の事件の真相を追いはじめるが、次第に、泥棒に転落するきっかけになった20年前のある出来事の記憶が呼び醒まされる――。

「名優揃いの現場だったので、安心して、胸を借りるつもりで演じました。役者の仕事を受ける時は、まず台本を読んで、自分にできそうかを考えます。役者が本業ではないけど、山崎でいい、と思って依頼してくれているんだ、と、内面を表現することを意識します。具体的にどうする、というよりも、カット(やり直し)がかからないように、と思って演じますね」

 映画の主題歌「影踏み」の作詞作曲、劇中の音楽も担当している。

「音楽家としてはやりがいのある仕事です。ラッシュ映像を繰り返し見ながら音楽を作るので、普段ゼロから曲を作る時とは違う相乗効果がある。映像の邪魔をせずに、登場人物の感情を表現することが必要なんです。自分の演技を何度も見なくてはいけないのは辛かったですけどね(笑)」

やまざきまさよし/1971年山口県出身。95年「月明かりに照らされて」でメジャーデビュー。最新作は3年ぶりのオリジナルアルバム「Quarter Note」(発売中)。

INFORMATION

映画『影踏み』
11月15日全国公開
https://kagefumi-movie.jp/

「週刊文春」編集部/週刊文春 2019年11月21日号

最終更新:11/16(土) 11:00
文春オンライン

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事