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今すぐ読んでもらう必要のない年金改革の話

11/16(土) 5:13配信

東洋経済オンライン

 公的年金保険というのは、仮に改革を行っても、その効果は何年も先にしか表れない。だから、私の本には、「年金改革というのは、何年も先を見越した植樹のような意識をもって取り組んでおく必要がある」(『ちょっと気になる社会保障』)と書いている。

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 そして今書こうとしている話は、来年の年金改革についてである。したがって、その効果が出てくるのは何年も先になる。そうした来年の改革が、どうも、将来の高齢貧困者を大量かつ固定的に生み、その人たちに厳しい人生を強いる結果になりそうな方向に進んでいるのである。

 そこまでわかっているのならば、その事態を変えればいいではないかと思われるかもしれないが、なかなかそうはいかない世界がある。そういう話をしておこうと思う。

■年金改革の最大眼目は適用拡大

 5年に1度行われる年金の健康診断である令和元年財政検証の結果を受けて、公的年金の年金改革が来年予定されている。財政検証でも示唆されていたように、次の年金改革の目標は、厚生年金の適用拡大である。

 今は、次の要件が適用基準である。

 このうち、月額賃金8.8万円以上という賃金要件は、週20時間以上働く人たちが、時給1000円を超えれば満たされる。ゆえに、最低賃金が1000円程度に上がるまで数年間じっと待つ。そして、改革に向けたエネルギーは、従業員数で示される規模要件の撤廃に集中する。

 実はそうしたことは、公的年金に詳しい人ならば随分と前からわかっていた。そうした人たちみんなでスクラムを組みながら規模要件の撤廃を目指して、それこそ何年もかけて一歩一歩準備を進めてきていたわけである。与党議員の中にも、勤労者であれば皆が被用者保険に入ることができる「勤労者皆社会保険制度」を掲げる人たちもいて、それは、彼らの努力により、2019年6月の「骨太の方針」にも書き込まれるところまできていた。

 就職氷河期といわれる第2次ベビーブーム世代に厚生年金を準備するには、来年の改革がタイムリミットだったからである。

 ちなみに、現行の501人以上は、適用拡大を決めた2012年改正法の附則に当分の間の経過措置として規定されていた。それは、激変緩和の観点からのもので、2012年改正法は2016年10月に施行されているので、法の成立から経過措置の段階に入って7年、法の施行から3年以上が過ぎている。

 こうした事情もあり、次回の年金改革では規模要件の撤廃が目指されていた。ところが、あれよあれよと、世の中に、全世代型社会保障検討会議というのが作られ、そこを取り仕切る経済産業省の官僚たちが、中小企業は最低賃金の引き上げで大変だろうとか、軽減税率導入への対応で手が回らないだろうとかを理由に挙げて、適用拡大は今の500人超から200人超だ、大目に見て100人超だと言い始めた。

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最終更新:11/16(土) 5:13
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