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爆売れ市場を狙え セガトイズ「出産体験玩具」はヒットするか

11/16(土) 6:00配信

日経クロストレンド

 セガトイズ(東京・台東)が意外性のある新ジャンルのおもちゃでクリスマス商戦に勝負をかける。2019年10月31日発売の「夢ペット 産んじゃったシリーズ」は、ぬいぐるみをなでながらお産を応援する、未就学児向け知育玩具。「出産」をテーマに子供の心をつかめるのか。開発者に勝算を聞いた。

【関連画像】母猫のおなかを開くと、中から子猫たちがかわいい顔をのぞかせる

●鳴き声の変化に合わせて出産を手伝う

 一見すると夢ペット 産んじゃったシリーズは何の変哲もない音の出るぬいぐるみ。猫、犬、うさぎの3種類あり、例えば「夢ペット 産んじゃったシリーズ ねこ産んじゃった!」なら母猫の背中をなでると「にゃー、にゃー」とリアルな鳴き声を出す。これだけなら「かわいいね」で終わりだろう。

 このぬいぐるみが“真価”を発揮するのはここから先だ。なで続けると「にゃー、にゃー」から「ゴロ、ゴロ」へと声色が変わり、さらに続けるとキラキラ光るような効果音が流れ、お産の準備が整ったことを告げる。面ファスナーで閉じられた母猫の腹部を開くとハッピーバースデーの曲が始まり、中から子猫たちを取り上げれば、無事、出産。締めはかわいい女の子の声で発せられる「ハッピーバースデー!」だ。

 生まれたばかりの子猫たちを母猫の腹部に押し付けると、コクンコクンとノドを鳴らして母乳を飲む音がする。もちろん犬やうさぎでは、それぞれ違う鳴き方で反応する。商品ジャンルとしては「ペット玩具」に該当し、ターゲットは3~6歳の女の子だ。

 確かにコンセプトは斬新かつユニークだ。しかし、いくら鳴き声やデザインでかわいらしさを強調したとはいえ、「出産」という生々しいテーマの商品を、あえて玩具販売の天王山であるクリスマス商戦に投入するのはなぜか。その理由はここ数年で激変した玩具市場にあった。

爆売れの「サプライズトイ」市場を狙う

 日本玩具協会の調査によると、日本国内の玩具市場規模は14年度から約8000億円付近で横ばいが続いていたが、18年度は約8400億円に伸びた。市場拡大に一役買ったのが女児玩具で、「サプライズトイ」という新市場が創出されたことだった。

 新市場創出の始まりは16年10月にタカラトミーが販売した「うまれて!ウーモ」だ。同商品は中身の見えないタマゴを選んで自分の手で殻を割り、中から出てきた架空の生き物「ウーモ」のお世話を楽しむペット玩具。価格帯も税別8800円と高めなので、セガトイズでマーケティングを担当する企画本部プロダクト企画部プロデューサーの土屋貴由氏は「(業界内では)皆さん売れない、と。僕らも思いました」と当時を振り返る。

 しかしフタを開ければ、「10万個売れれば大ヒット」といわれるなか、2カ月足らずで国内累計販売個数が10万個を突破。海外でも大ヒット商品となり、その後リリースされた関連商品も国内外でヒット。この成功を受け、他社も同様の商品の開発・販売で続いた。

 セガトイズも18年8月、丸い球体が人形になるまでのプロセスを楽しむ「WHO are YOU?」を発売。米国で最も優れた玩具を表彰する“おもちゃ界のアカデミー賞”「TOY OF THE YEAR AWARDS」のファイナリストに選出され、世界30カ国以上で販売し、北米では年間販売数500万個を達成した。

 これらの「自分で誕生(成長)させる」「何が出てくるか分からない」商品は「サプライズトイ」と呼ばれるようになり、一気に新市場が形成された。日本玩具協会によると、サプライズトイ関連商品の18年度の売り上げは約85億円だった。前述の玩具市場が拡大した約400億円のうち、2割以上をこの“新ジャンル”が占めたことになる。セガトイズがクリスマス商戦に夢ペット 産んじゃったシリーズを投入したのも、こうした好調なサプライズトイ市場という流れがあるからだ。

 夢ペット 産んじゃったシリーズでは、通常、生まれてくる子供の数は3匹だが、4匹、5匹の場合もある。子供の色は5色を用意したが、それ以外に“レアカラー”が生まれることがあるという。どちらも箱を開けてからのお楽しみという趣向だ。商品ジャンルはペット玩具の位置付けだが、「サプライズというトレンドをフックにすることで、メディアに取材してもらいやすくなることが多い。それで露出を増やす戦略です」と土屋氏は説明する。話題性の高まりに期待し、販売数は向こう1年間で12万個を目指している。

 玩具として非常に興味深い切り口の夢ペット 産んじゃったシリーズだが、当初サプライズトイのことは全く視野に入っていなかった。このユニークな商品誕生の背景には、恐らく小さな子供の親なら誰もが直面する、ある“悩み”があった。

●リアルだと「うんちが出てるみたい」と子供に不評

 セガトイズ 企画本部プロダクト企画部主任の伊藤さやか氏がこの商品を企画したのは2年前。きっかけは当時4歳の娘に「赤ちゃんってどうやって生まれてくるの?」と質問されたことだった。幼い子供にどう説明すべきか、困り果てた伊藤氏は「実際に動物などはこう生まれてくる、というのが分かれば教えてあげられる。そういうおもちゃがあったら……」と思い立った。

 早速、犬が出産する海外の玩具などを参考にしながら試作品を制作。実際の出産シーンを忠実に再現し、股の間から赤ちゃんが出てくる動物のぬいぐるみをモニターの子供たちに見せると、「うんちが出てるみたい」と不評を買った。このとき伊藤氏は、母子ともにリアルさではなく、かわいらしさを求めていることを認識した。

 改良の結果、お産を観察する単なる知育玩具ではなく、優しく背中をなでることで産気づき、出産に至るという“お世話”の要素でインタラクティブな関係を育める玩具を目指した。出産のプロセスごとに、数種類の鳴き声、楽しげな効果音、かわいい歌で変化を付け、股ではなくおなかから子供を取り出すなど、実際のお産にはない要素も取り入れ、おもちゃとしての面白さを徹底的に追求した。

 一方で専門的な知識も生かした。ブリーダーの資格を持つ上司から、表情や反応の作り込みに対する厳しい指導を受けたことで、見た目のかわいらしさに、しぐさや動作のリアリティーが加わった。その結果、多くのモニターの子供たちから大人気だったという。

 「1回で産みきりではなく、自分でおなかに詰めてもう一回最初からかわいがったら産気づいて。(効果音が)キラキラと鳴って、ハッピーバースデーで、わはは、やったー、と。それを何回もやって、取り合いになりました」(伊藤氏)

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最終更新:11/16(土) 6:00
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