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【ヒットの法則57】2005年、ポルシェ ケイマンSが登場、そのポジショニングの巧みさで約束された成功

11/17(日) 12:01配信

Webモーターマガジン

ボクスターとの違いを巧みに演出

2005年5月、かねてより噂の「ケイマンS」の全貌が明らかになった。ポルシェの2シーターミッドシップクーペとなれば期待は高まるばかり、ただクーペボディということはうっかりすれば911の市場を食い荒らしかねない微妙なポジションでもあった。一体、ケイマンSとはどんなモデルだったのか。限られたジャーナリストのみが参加することを許されたテクニカルワークショップからの報告を振り返ってみよう。(以下の記事は、Motor Magazine 2005年8月号より)

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その安定した成長ぶりと高い利益率で、今や世界中の自動車メーカーから羨望の目で見られているポルシェ。この世界でもっとも小さな自動車メーカーのひとつから、ニューモデル「ケイマンS」が発表された。

このスポーツカーメーカーを主宰するDr.ヴィーデキングの目標は、現在のペースを保ちながら年間10万台の生産台数を達成することだ。カイエンの成功で今年7万6000台にまできた。そしてこの4番目のモデルプログラム、ケイマンSの登場で、5年後にはいよいよ10万台を達成しようと目論んでいるのである。

ところで「ケイマン」という名称だが、アメリカ産のワニ、あるいはカリブ海の島などの語源が語られているが、ポルシェ側では別に特定はしていなかった。しかし、ケイマンは英語読み、ポルシェ関係者はドイツ語でカイマンと発音していた。

さて、このニューモデルだがそのミッドシップエンジンレイアウトと、スリーサイズの全長4341mm、全幅1801mm、そして全高1305mmから容易に想像できるように、実態はボクスタークーペである。

しかし、搭載されるエンジンは3.4Lで、ボクスターS(3.2L)と911カレラ(3.6L)のちょうど真ん中の排気量を持つ。また出力も295psと、280ps(ボクスターS)と325ps(911カレラ)のほぼ中間に位置している。

この最高出力の差が、ケイマンSのポジショニングを暗示する符号で、ヒエラルキーは上から911カレラ、ケイマンS、そしてボクスターSと並ぶことになるのである。性能的にも同様で、ケイマンSの最高速度(275km/h)と0→100km/hの加速(5.4秒)はやはり911カレラとボクスターSの中間値となっている。

こうした内容をさらに明らかにするために、またケイマンSに新たに採用された新技術を紹介するためにポルシェはテクニカルワークショップを開催した。会場となったポルシェの開発センター、ヴァイザッハ研究所に招待された我々の前に現れたケイマンSは、スポーツカーの典型的なプロポーションを持った素晴らしいクルマであった。

とくに全長で12mmとわずかな差にもかかわらずボクスターよりも確実に長く見えたのはハッチバックのためかもしれない。このケイマンSの基本デザインは現時点ではすでに定年退職している元ポルシェ・チーフデザイナー、ハーム・ラガーイが残したもので、後述するエアインテークとフォグランプの組み合わせはラガーイの好みを暗示している。

フロント付近にはたしかにボクスターの名残りはあるが、大きな左右のエアインテークに渡されたフォグランプ(ラガーイ風)でかなり印象は変わっていた。また911より低く落とし込まれたハッチバックルーフラインは、ミッドシップでなければ実現不可能なものである。

特にこのケイマンSが美しく見えるのは、斜め後方からのアングルで、力強く盛り上がったリアフェンダーに挟まれて降りてくるルーフとの競演が素晴らしい。ちなみにこのハッチバックの両側には、強度確保のためにわずかな峰があるが、筆者の勝手な想像だが、このケイマンSではデザイン検討の初期段階に904風のリアウィンドウを検討したと噂されており、その名残りかもしれない。

またこのテールゲートの下には容量260Lの実用的なトランクが現れる。下にボクサーエンジンが埋まっているために段差があり、けっこう薄いけれども、これはケイマンの実用的ツアラーとしての特質を高めるには十分である。ちなみにトランクにはメンテナンス(オイルと水)用の注入口がレイアウトされている。

一方、コクピットを見るとダッシュボード、そしてインストルメント、またインテリアがボクスターと同一なことに気がつく。この辺りに利益率最高を誇るポルシェの共通部品戦略が見えてしまう。もし独立したラインを標榜するのであればもう少し意匠を変えて欲しかった。

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最終更新:11/17(日) 12:01
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