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【ヒットの法則57】2005年、ポルシェ ケイマンSが登場、そのポジショニングの巧みさで約束された成功

2019/11/17(日) 12:01配信

Webモーターマガジン

911、ボクスターと違う新たなユーザーが生まれるだろう

さてこの日のワークショップではケイマンSの試乗はできなかったが、ポルシェのテスターによる様々なデモ走行が行われた。

このケイマンS用エンジンにはボクスターには採用されていないバルブ可変システム「ヴァリオ・カム・プラス」が装備され、トルクの発生をよりスポーティな味付けに変えている。その結果、ヴァイザッハのコースにおけるこの高速デモ走行では特に高回転域ではボクスターに見られない鋭いトーンが響きわたっていた。

この動力を後輪に伝えるのは他のポルシェモデル同様にスタンダードで6速マニュアル、オプションでティップトロニック5速ATが選択可能となる。すでに世界中で広範に普及しているシーケンシャル・セミオートマチックは残念なことにこのニューモデルでも見送られている。

ところでサスペンションも基本的にはボクスターと同一で、フロント/リアともにストラットであるが、このフロントサスペンションは新たにアルミの鍛造パーツを採用しスチールと同じ強度を保ちながら30%の軽量化に成功している。

さらにケイマンSにはすでに他のポルシェシリーズでも知られているポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメント(PASM)もオプションで用意されている。車高を10mmほど下げ、さらなるスポーツ走行を楽しむことを可能にするデバイスは、ケイマンSをサーキットに持ち込んでも十分に対応できるマシンへと変化させることができる。

もちろんPSM(ポルシェ・スタビリティ・マネージメント)は標準だが、この日のテストではコーナリング時における介入を控え目にし、よりドライバーオリエンテッドでスポーティな走行を可能にするファインチューニングが行われたことを紹介していた。

もちろんこのケイマンSは「S」を標榜する以上、ポルシェの売りであるブレーキにも十分な配慮がなされている。標準のブレーキディスクに対してオプションでポルシェ・セラミック・コンポジット・ブレーキが用意されるが、このディスクと組み合わされるアルミ製キャリパーにはイエローの塗装が施される。

また、ケイマンSからポルシェは最新のタイヤを選択している。ミシュランとの共同開発による新しいタイプはフロントがわずかに広がって235/40ZR18、そしてリアには現行の他モデルと同じサイズの265/40ZR18が採用されている。このタイヤは2004年のボクスターSの時代と比べて重量は5%軽量化され、ドライ時のブレーキ性能が4%向上し、回転抵抗は6%低減されている。

ところでさらにこのケイマンのスペックを見ると空車重量が1340kgとボクスターS(1420kg)あるいはボクスター(1370kg)よりも軽くなっていることに気づく。これは単純にソフトトップとその開閉システムを外しただけでなく、この新しいクーペにはスチールを基本としながら、新たにアルミそしてプラスチック素材が採用され、そのスチールとの割合はいまや50対50にまでになっているという。

ちなみに、このケイマンの生産はポルシェ本社シュツットガルトではなく、これまでボクスターがそうであったようにフィンランドのヴァルメット社に委託される。

さて、注目のケイマンSの価格は5万8529ユーロ(約790万円)であるが、このプライシングは見事としか言いようがない。これはボクスターSよりも約6000ユーロ(81万円)高く、そして911カレラと比べるとは約1万8000ユーロ(約243万円)も安い。ふつうに考えるとボクスターSがもっともお買い得に違いない。反対に911カレラは高すぎるようにも思われる。しかし、こうした現実的ファイナンス議論はポルシェエンスージアストの皆さんにはおそらくどうでも良いことなのに違いない。

私の予想ではケイマンはボクスターとは異なる、また911とも一線を画したユーザー像が出来上がると思う。ポルシェのミッドシップスポーツクーペという別の意味でポルシェの走りに期待するドライバー達である。彼らはケイマンSに続く250psのケイマン、あるいは廉価版のケイマンCS(クラブスポーツ)へと広がってゆくだろう。

この意味で第4のモデルプログラムはすでに成功が約束されている。ポルシェの希望的観測によれば2010年までには4万台のカイエンと3万台の911カレラ(この中にはこれから発表される多くのバリエーション、480psのターボ、500psのターボS、そしてGT3などが含まれている)。そして1万5000台のケイマンと同じく1万500台のボクスターで10万台の大台に達することになる。

こうして冒頭に述べたポルシェ社長、Dr.ヴィーデキングの野望は一歩一歩実現へと向かって行くのである。(文:木村好宏/Motor Magazine 2005年8月号より)

ポルシェケイマンS(2005年)主要諸元

・全長×全幅×全高:4341×1801×1305mm
・ホイールベース:2415mm
・エンジン:対6DOHC
・排気量:3400cc
・最高出力:295ps
・最大トルク:340Nm/4400rpm
・トランスミッション:6速MT
・駆動方式:MR
・0→100km/h加速:5.4秒
・最高速:275km/h
※ワークショプで明らかになった欧州仕様のデータ、オプションでティップトロニック5速ATも設定。

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最終更新:2019/11/17(日) 12:01
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