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探検家・高橋大輔の 旅「映え」るツール10選!

11/17(日) 20:11配信

GQ JAPAN

探検家の道具はタフであるとともに軽く、多用途でなければならない。「物語を旅する」高橋大輔が選ぶ 「冒険旅」の相棒。

【高橋大輔が選んだ旅「映え」アイテム10選を見る!】

旅の道具はタフなものを選びたい。1998年、わたしは氷点下30度を下回る厳冬期のサハリン島で、身につけていた腕時計の針が止まり、青ざめた。1月のサハリンは夜の訪れが早く、午後3時を回ると周囲が暗くなる。時間がわからないまま屋外にいたわたしは嵐にみまわれ、漆黒の闇のなかに取り残されてしまった。幸い集落の灯りが見え、遭難や凍死の危険を免れることができた。道具が生死を分けるものだと思い知らされたできごとだ。

だが闇雲にヘビーデューティな道具を選べばいいかというと、そう単純ではない。頑丈なものはおしなべて重い。荷物を1グラムでも軽くしたい探検家は、タフさと軽さを天秤にかける。例えば水の容器を選ぶ際、金属製の水筒か市販のペットボトルかの2択があるとしよう。水筒は頑丈さという点で信頼はおけるが、その分重い。一方、ペットボトルは軽く壊れやすいものが大半だが、炭酸水のボトルのようにガス圧に耐えられる丈夫なものもある。金属製の水筒ほどではないが、耐久性は十分だ。

わたしはペットボトルのほかの機能に着目した。機密性が高いので水難の際は「浮き」として使える。ボトルの肩は虫眼鏡のレンズのように湾曲しているので太陽光を通せば火起こしができる。また、コメを入れて鍋で湯煎すれば飯盒として使える。容器を半分に切断して中身を食べた後でも使い道は様々だ。ボトルの上半分を逆さにして下部に差し込み、中に小石や布切れ、木炭などを入れると簡易浄水器が完成する。さらに魚を獲るワナに作りかえることも可能だ。硬質プラスチックなので、魚の鱗落としや地面を掘るスコップにも応用できる。何の変哲もないペットボトルが、工夫次第でマルチツールになるのだ。500ミリリットルの容器の場合、空の状態で水筒が重さ約300グラム以上あるのにたいしてペットボトルはわずか20グラムしかなく、荷物を一気に約280グラムも軽量化できる。実験を経てわたしが選んだのは、市販の炭酸水のペットボトルだった。

旅ツールを選ぶ際の基本は「ワンアイテム、マルチユース」だ。いく通りもの使い道ができるツールを選ぶことで、旅の可能性や自由度を無限大に広げることができる。

道具をマルチに使いこなすためのヒントは、物が持つ機能や形状に着目することである。わたしは旅の下着として、ミレーのドライナミックメッシュを身につける。汗を吸収しないポリプロピレン使用のメッシュシャツで、低体温症のリスクを軽減してくれる優れものだ。だが水を吸わないメッシュ生地を下着用途だけにとどめておくのはもったいない。袖口などを結んで袋状にすれば、水辺で魚をすくい上げるタモになる。またハッカ油をスプレーして頭から被れば、虻よけネットに早変わり。これほどマルチに活躍できる下着がかつてあっただろうか。

旅ウエアのなかで、最強のプロテクションを誇る1着にフィルソンのユーティリティエプロンがある。11オンスのドライフィニッシュティンクロスコットンが使われているので、硬い棘が待ち受けるイバラの藪に平気で入っていける。着るだけではなくそれをラフな岩場の地面に敷けば、寝そべってくつろぐこともできる。荒野を快適なベッドに変える魔法の絨毯だ。

ウエアばかりではない。最近のわたしの秘密兵器はココヘリ。わずか20グラムの超小型発信機が最長16キロメートル先まで電波を飛ばすので、遭難時に救命ヘリがそれをキャッチして居場所を特定してくれる心強いサービスだ。安全対策としてはもちろん、受信機と合わせれば用途が広がる。メンバーとはぐれた時の合流にも重宝するし、GPS電波が届きにくい山間部で謎の古代遺跡などを見つけた時には、発信機を現場に残置しておくと、のちにその場に戻ることができる。フル充電したあと3カ月以内なら、電波を発信しつづけるからだ。

過酷な土地で未知なる発見を求める探検家はウエアやツールを機能で選ぶ。いかなるものでも機能を徹底すれば、そこに美が生まれる。旅「映え」ツールもまた同じであると思う。

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最終更新:11/17(日) 20:11
GQ JAPAN

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