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「日本人の代表なんだから…」と怒られた在日コリアン3世が思うこと

11/17(日) 8:01配信

現代ビジネス

大坂なおみの試合を熱心に観る父

 夜遅くまで自室で仕事をしていたある日、休憩しようとリビングへ降りると、大坂なおみ選手のプレーを「いろいろあったんだろうけれどよく頑張っているよね。とても偉いと思うよ」と言いながら、熱心に観ている父がいた。

【現場はパニック!】日本人は知らない、いま韓国でほんとうに起きていること…

 「いつもは9時ごろになると上に行っちゃうのに、きょうは夜遅くまで大丈夫なの?」と声をかける。

 「この試合が終わったら寝る」

 夜更かしをしている子どものような父の答えだった。

 コーヒーを淹れながら、熱心に観戦している父の背中を見て、試合が気になりはじめ、お気に入りのパンダのマグカップを片手にテレビの前に座った。

 わたしが観はじめたとき、相手選手から反撃にあい、彼女のプレーは少し弱気になっていた。父は「ここで根性を出さなきゃ」とコーチのような口ぶりで画面に語りかける。

 彼の叱咤激励が効いたのか、次第に調子を取り戻し、勝利を収めた。

 大坂選手の晴れやかな表情を観た父の目には大粒の涙が光っていた。

プレーよりも、たどたどしい日本語?

 その試合に勝ってから、朝、流れているニュース番組のスポーツコーナーでは彼女の動向を伝えるようになったが、コメンテーターたちはプレーよりも記者とのやりとりでたどたどしい日本語を話すことに興味を持っていたようだった。

 「そんなことに注目してなくてもいいじゃんね」とテレビを観てつぶやくと、向かいの席でトーストをかじっていた父は「何も知らないであそこにいるんだよ。訳も分からないのに日韓関係をああだこうだ言ってるのと同じ」と言った。

 「『大坂なおみは日本語も上手くないし、日本人っぽくないのに、どうして日本人として取り上げるのか分からない』って言っているひとたちもいるみたいよ」

 ネットで見た書き込みを伝えると「だったら、ラモスとか、呂比須とか、全日本で活躍したやつらはいったいどうなるんだろうな」と父は吐き捨てた。

 小さいころ、ピッチの上で見事なポール裁きを見せていた懐かしい選手たちの名前を聴き、国を代表して家族や仲間のために、日の丸を背負ったからこそ、頑張れたみたいなことをだれかが書いていたのを思い出し、「大坂なおみもそのうち『日の丸を背負って、頑張ります』みたいなことを言うのかな」とひとりでつぶやいた。

 「きょうは夕飯いるのか?」という夕食を作る父の問いかけに、「いるよ。きょうはいつものカフェに行って、あたらしいバッグを買いに行くだけだから」と答えた。

 「また壊れたのか? お前のバッグを持ったことあるけど、あんな重たかったら、肩壊すぞ」

 普段、背負っているバッグの重さを知っているひとはおなじことを言う。本が手放せないうえに、いつでも書けるようにルーズリーフや原稿用紙などの仕事道具も持参している。自転車に乗るときは替えのTシャツや水筒もいれるので、3か月ぐらいで壊れてしまう。

 「しょうがないじゃん。どんなに減らそうとしてもあの量になっちゃうんだから。つぎは丈夫なのを買ってくるよ」

 そう言って家を出た。

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最終更新:11/17(日) 8:01
現代ビジネス

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