サッカー選手にとってのスパイクは命のようなもの。プロともなれば、機能やデザインにこだわり抜いた一足で試合に挑む。しかし、日本代表の「10番」の足下を見てみると……。
現時点での「10番」は、ポルトガルの名門「FCポルト」に所属しているMF中島翔哉選手(25)である。
近ごろ、彼のスパイクが、真っ黒なのだ。昨今はハデな色のスパイクが多いが、昔はだいたい黒地にメーカーの白いラインが入ったものだったから、ある程度年齢を重ねた方々には自然かもしれない。
しかし、日本サッカー協会関係者をはじめ、スポーツ紙記者、ファンにとっては、首を傾げ、目を凝らすような事態なのだ。サッカー協会関係者が語る。
「中島はずっと、アディダスのシューズを履いてきました。当然、専属契約も結んでいます。本人も、青や赤、黄色といった目立つ色が好みだと言っていたし、昨年初めてA代表に選ばれてからも、明るい色のスパイクを履いていたのです」
それが一転して、
「カタールからポルトに移籍した今年7月あたりから、真っ黒なスパイクを履くようになりました。代表戦もそうです。現場スタッフが確認したのですが、アディダスの三本線を黒く塗ったのではなくミズノ製でした。これが気になるんですよ。もっと言えば、不安です」
不安と言われても、なにがどう不安なのか。
協会関係者が続ける。
「契約問題ですね。代表選手クラスになると、ふつうは好みのメーカーと契約しています。たとえばアディダスと契約したら、人目に触れるところでアディダス以外は履かない。違反したら違約金を払う。そういう条件で、選手はメーカーから年間数千万円のお金をもらっているのです」
メーカー側としては、大枚をはたいてでも自社製品を身に着けてもらい、宣伝効果を狙うわけだ。
「サッカーでは、たとえば合宿中の練習試合などで、靴擦れをしたとか壊れたとか、不測の事態が起こることがあります。予備を用意しておらず契約メーカー以外のスパイクを履くしかないとなったら、メーカーのラインを消します。黒のシューズに白い線ならば白い部分をマジックで塗ったりするんです。現代のカラフルなスパイクはラインが目立たないので、ロゴを消せば済みますが」
つまり、中島選手の真っ黒なスパイクは、契約違反の“確信犯”ということになるわけだ。しかしそれが、なぜサッカー協会関係者を不安にさせるのか。スポーツ紙デスクがあとを受ける。
「中島選手の代理人はブラジル人で、彼をミズノが抱き込んでいましてね。彼が抱える選手はみな、ミズノを履くようになるんです。中島選手は、海外では守備面ばかり指摘されて攻撃面の調子を崩し、爆発的な活躍ができていません。そんな状態の10番に、“調子を上げるために気分転換でも”と代理人がミズノを勧めた可能性がある。この代理人は海外移籍の希望を叶えてくれた恩人なので、応じざるをえなかったのかもしれないのです」
黒いスパイクは、あえてミズノのラインを縫いつけていない特注品なのだとか。
「いずれにしても、中島選手が復調せずミズノを履いたままだと、アディダスへの違約金も千万単位の額になる。それをミズノが肩代わりし、じきにミズノに替えることになるでしょう」
つけこまれるような弱みがあるのか、ないのか。代表の「10番」ともなると、“足下”をめぐって、こんな暗闘もあるわけだ。
「週刊新潮」2019年11月14日号 掲載
新潮社
最終更新:11/17(日) 5:57
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