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ペルー日本大使公邸占拠事件の元人質が語る映画『ベル・カント とらわれのアリア』

11/18(月) 12:40配信

nippon.com

松本 卓也(ニッポンドットコム)

ジュリアン・ムーアと渡辺謙が共演する米映画『ベル・カント とらわれのアリア』が日本公開(11月15日~)。原作のベストセラー小説は、実際の事件をヒントにしている。1996年末から4カ月にわたり、日本をはじめ世界中が固唾を飲んで見守った在ペルー日本大使公邸の人質事件だ。映画公開の機会に、実際の事件を人質として体験した元日本大使館員の小倉英敬氏から話を聞いた。

『ベル・カント とらわれのアリア』は、米女性作家アン・パチェットの2001年の小説『ベル・カント』を映画化したもの。英米両国で権威ある文学賞を受賞し、同年のアマゾン・ベスト・ブック・オブ・ザ・イヤーに輝いた作品だ。

物語の舞台は南米「某国」の副大統領邸。大勢のVIPを招待してパーティーが開かれた。その中には日本人実業家のホソカワ(渡辺謙)がいた。夜会の目玉は、世界的な名声を誇るソプラノ歌手、ロクサーヌ・コス(ジュリアン・ムーア)のサロンコンサート。主催者がホソカワの会社の工場誘致を狙って、彼が愛してやまない歌姫をスペシャル・ゲストに招いたのだ。

ロクサーヌの歌声が響いたその瞬間、武装集団が邸内になだれ込み、招待客たちを人質に立てこもる。ゲリラグループは収監中の同志の釈放を求めるが、政府との交渉は平行線のまま、事態は長期化する。人質として「価値」の高い有名人であることから、女性の中で唯一解放されなかったロクサーヌ。ゲリラは交渉の糸口として彼女にバルコニーで歌わせる。この歌をきっかけに、貧困層出身で教育を受けられずに育った若いゲリラたちと、年長の教養豊かな人質たちとの間に親子や師弟のような関係が生まれていく――。

アン・パチェットが物語の着想を得たのは、実際に起きた事件だ。場所は副大統領邸ではなく、ペルーの首都リマにある日本大使公邸。1996年12月17日夜、天皇誕生日を祝う恒例のレセプションに、武装したトゥパク・アマル革命運動(MRTA)のメンバー14人が侵入して公邸を占拠し、青木盛久駐ペルー大使と大使館員、招待客ら621人を人質にとったのだ。

女性や子ども、高齢者など、人質の多くはすぐに解放されたが、72人が約4カ月にわたって拘束された。翌年4月22日、フジモリ大統領(当時)の指示により軍特殊部隊が公邸に突入してゲリラ全員を射殺、人質事件は終結した。この攻防の間に特殊部隊2人と人質1人(ペルー最高裁判事)が死亡した。最後まで人質となった日本人は青木大使、大使館員のほか、日本企業の駐在員ら24人で、そのうちの1人が小倉英敬氏。当時は在ペルー日本大使館の一等書記官で、現在は神奈川大学で教鞭(べん)を執る。

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最終更新:11/18(月) 12:56
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