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「怪獣博士の生徒たち」は手に取らずにいられない1冊

11/19(火) 7:00配信

Book Bang

 1960年代は「怪獣」の全盛期だ。東宝の『ゴジラ』シリーズが毎年のように公開され、テレビの『ウルトラQ』や『ウルトラマン』が人気を集めていた。

 当時、怪獣に関する知識を提供してくれたのが「怪獣博士」こと大伴昌司だ。雑誌に掲載された「怪獣図解」は、怪獣たちの身長や体重といったデータから体内の構造までを明らかにする画期的なものだった。大伴の解説が持つ独特の世界観とリアリティが怪獣ファンを魅了したのだ。

 そんな「大伴の生徒たち」にとって、倉谷滋『怪獣生物学入門』は手に取らずにいられない一冊だ。とはいえ、そこには一種の警戒感もある。「形態進化生物学者」の著者によって、怪獣がアカデミズムの立場から検証され、存在自体を否定されたら辛い。怪獣がフィクションであることを承知で楽しんでいるからだ。

 しかし、それは杞憂だった。本書は、「もしそれが本当に起こったなら」を前提に、科学的事実や法則という側面から怪獣を捉え直す試みである。もともとゴジラはどこに棲んでいたのか。宇宙怪獣キングギドラはなぜ地球の脊椎動物と類縁性を持つのか。マタンゴになることは感染なのか。「ウルトラ怪獣」のジラースが持つエリマキの構造と機能とは。さらに、『シン・ゴジラ』のゴジラが見せた乱杭歯は何を意味するのか。

 こうした設問に答えていく著者の筆致は喜びに満ちている。科学者であると同時に、年季の入った無類の怪獣好きでもあったのだ。

[レビュアー]碓井広義(上智大学文学部新聞学科教授)
1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年にわたりドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授、東京工科大学教授などを経て2010年より現職。専門は放送を軸としたメディア文化論。著書に「テレビの教科書」ほか。毎日新聞、北海道新聞、日刊ゲンダイなどで放送時評やコラムを連載中。[公式サイト]碓井広義ブログ

新潮社 週刊新潮 2019年11月14日号 掲載

新潮社

最終更新:11/19(火) 7:00
Book Bang

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