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「日本の農業はポテンシャルしかない」農業界の"稀人"たちに共通するモチベーション

11/19(火) 6:00配信

週プレNEWS

農業就業人口の減少、高齢化、そしてTPP(環太平洋パートナーシップ協定)や日米貿易協定などの自由貿易や関税撤廃の流れのなかで、窮地に立たされている日本の農業。

そんな農業の世界にあえて飛び込み、独自のアイデアや柔軟な発想で新たな可能性を切り開いている、個性的な10人の取り組みを取材し、日本の農業が秘めた「未来へのポテンシャル」を感じさせてくれるのが、川内イオ氏の著書『農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦』(文春新書)だ。

* * *

――川内さんは自称「稀人(まれびと)ハンター」として、多くの「規格外の稀な人」を取材してきたそうですが、農業に興味を持たれたきっかけはなんだったのでしょう。

川内 この本で最初に紹介しているピーナッツ農家の杉山孝尚さんとの出会いが大きいですね。最初は人づてに「こんな面白い人がいるよ」と聞いて、そこから自分で調べてみたんです。

そうしたら、ニューヨークにある世界有数の会計事務所で働いていて、農業経験ゼロだった人が、故郷の静岡・浜松で落花生の栽培からスタートして、究極のピーナッツバターを作っている。はたから見たら「なんじゃそりゃ?」っていうキャリアじゃないですか。

取材に行って話を聞いたら、杉山さんのキャラクターはめちゃくちゃ面白いし、見た目もオシャレだし、ピーナッツバターはかけ値なしにおいしい。

日本で農業はキツイ、汚い、カッコ悪い、稼げない、結婚できないの「5K」の職業と呼ばれています。また、僕らの食卓を支える大切な1次産業のひとつのはずなのに、農家の高齢化やTPPなどで危機的な状況にあることも知っていたので、僕の中で農業はネガティブなイメージしかなかったのですが、杉山さんに会って、ひょっとして「農業界って、面白い人がたくさん隠れているじゃないか?」という発掘欲が湧いたんです。それが、農業に注目するようになったきっかけですね。

――杉山さんの何が輝いて見えたのでしょう。

川内 杉山さんはニューヨークで働いていたときに、偶然、浜松の落花生が1904年のセントルイス万博で世界一のピーナッツに選ばれたことを知って半年後には退職、帰国して農家に転身します。

そこから、浜松では生産が途絶えていた「遠州小落花」という品種の種を探し求めます。その過程が、まるで探偵みたいで話を聞いていてドキドキしましたし、その落花生を試行錯誤の上に栽培に成功して、ピーナッツバターを作って世界で売るという夢を、語るだけじゃなくて実現している。

一見、農業という地味で地道なことをやりながらも、世界を相手に戦っている人に出会ったら、自分がそれまで農業に抱いてきたネガティブなイメージが、まるでオセロみたいにどんどんひっくり返りました。

――それ以外にも、梨農家の経営を数百のカイゼンで効率化した人、世界最大級のレタス工場を軌道に乗せた人、農産物の新たな流通システムを開拓した人、日本では不可能と思われた国産バナナの生産に成功した人など、さまざまな「農業稀人」が本書では紹介されていますが、彼らに共通する「成功のヒント」ってありますか?

川内 まず、取材した10人の方たちは「農業の可能性を信じている」ということです。僕は取材の最後に「日本の農業のポテンシャルをどう思いますか?」と質問しているのですが、例外なく「ポテンシャルしかない」とか、「伸びしろしかない」という答えが返ってきました。

皆さん、そこは無理して強がって答えているわけではなく、本気で農業はもっと面白くなると確信している。

日本の農業が危機に瀕(ひん)しているのは、単に今までのやり方が現代に合わなくなっているだけで、そこに違うやり方だったり、アイデアを持ち込めば、まだまだ可能性が広がっていくというのは、僕自身も取材を通じて強く感じました。

その上でもうひとつ、彼らの共通点を挙げるとすれば、いわゆる常識にとらわれず、「こうやったら、もっといいものができるんじゃないか」という無邪気な挑戦心に任せて、ほかの人が「えっ、それやっちゃうんだ」ということを軽やかに飛び越えられる。そういうチャレンジする力を持った人たちだということですね。

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最終更新:11/19(火) 6:00
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