ここから本文です

安田峰俊/香港デモ「あさま山荘化」する若者たち〈行き場を失ったエネルギーは市民社会からも乖離しはじめた〉――文藝春秋特選記事【全文公開】

11/19(火) 6:00配信 有料

文春オンライン

 ――ボンッ。パアン。

 9月15日午後5時15分、香港中心部・金鐘地区の政府総部前。催涙弾やビーンバッグ弾(暴徒鎮圧弾)の発砲音が次々と鳴り響くなか、私は最前線から十数メートル離れた夏慤道の高架橋の上でカメラを構えていた。

 この近辺は東京でいう丸の内や霞が関に相当する。周囲のビルや商店は軒並み入り口を固く閉ざし、殺伐とした雰囲気が漂う。日曜の午後にもかかわらず、屋外にいる人間はデモ参加者と報道陣と警官隊だけだ。

 ――ガコッ、ガコッ。

 発砲音に混じって鈍い音が響く。デモ参加者の若者が政府総部の壁に向けて石塊を投擲しているのだ。さらに周囲は、若者たちが威嚇のためにバス停やガードレールを叩く音、投擲に用いる路上の敷石を砕く音、煙や衝撃を受けて鳴り出したままの火災報知器のベル音、加えてさまざまな怒号と悲鳴が渾然一体となり、ひどく騒々しい。

 今回の大規模な抗議運動は、もとは香港政府が打ち出した逃亡犯条例改正案への反対運動が発端だが、9月4日に林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が条例改正案の撤回を表明してからもおさまる気配はない。デモ参加者の大部分は平和的な方針を取る人々(「和理非(ウオーレイフエイ)」)とはいえ、運動の長期化によって事態の過激化も進んでいる。いまや「勇武派(ヨンモウパイ)」と呼ばれる、警官隊と積極的に衝突する数千~数万人程度の過激な若者が運動の主役の座を奪いつつある。 本文:7,267文字 写真:3枚

続きをお読みいただくには、記事の購入が必要です。

すでに購入済みの方はログインしてください。

  • 税込220

    PayPay残高使えます

サービスの概要を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。 購入後に記事が表示されない場合はページを再度読み込んでください。 購入した記事は購入履歴で確認できます。

安田 峰俊/文藝春秋 2019年11月号

最終更新:11/19(火) 6:00
文春オンライン

おすすめの有料記事

PayPay残高使えます

もっと見る