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人工ウイルスがテロ兵器になる日

11/20(水) 17:16配信

ニューズウィーク日本版

<遺伝子編集技術の発達で強力な病原体がつくれる時代――テロリストに悪用される恐怖のシナリオを防ぐには?>

今のアメリカで最も日常的なテロの脅威と言えば、やたら高性能な銃の乱射行為だろう。しかしそう遠くない未来に、もっと広い範囲でもっと多くの人を殺せる脅威が訪れるかもしれない。感染力と致死力を人工的に強化された病原体が、世界中にばらまかれる恐怖のシナリオだ。

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ベストセラー作家で未来研究家のロブ・リードに言わせると、そうした悪夢をもたらすのは「合成生物学」だ。それは生物学と工学が合体した技術で、遺伝子組み換えによる食品からスーパー殺人ウイルスまで、生命体を人工的に、お好みでつくり出す。

この10年ほどで病原体の遺伝子を改変する技術は驚異的に進化したとリードは言う。結果として、公衆衛生や地球の安全性は今までにない脅威に直面している。

リードは自称「合成生物学の大ファン」で、この技術を使えば地球温暖化を食い止めたり、人の寿命を延ばしたりできると考えている。ただし、そこには「闇の世界」の影響もあり得る。その技術が悪い人間の手に渡れば、それを用いて開発した生物兵器が人類に未曽有の打撃を与えかねないからだ。

旅客機を爆破すれば100人単位の、大型スーパーを襲撃すれば数十人単位の犠牲者が出る。ただし被害はいずれも局所的だ。しかし人工ウイルスは世界中に拡散し、猛烈な勢いで感染する。その犠牲者数は、悪くすれば億単位にもなりかねない。

SFっぽい小説やドラマの世界の話ではない。合成生物学は現に大きな成果を上げているし、一方では深刻な懸念をもたらしている。

2011年にはオランダとアメリカの研究チームがそれぞれ、致死性の高い鳥インフルエンザウイルスH5N1型のDNAを改変し、本来なら人には感染しにくいウイルスを、人から人へ感染しやすいものに変えることに成功した。

突然変異でそうしたウイルスが生まれた場合に備え、先回りして対策を講じるのが目的だった。当時、米バイオセキュリティー国家科学諮問委員会の委員長を務めていたポール・カイムは「こんな恐ろしい病原体のことは考えたくもない」と語ったものだ。

その後、クリスパー(CRISPR)と呼ばれるゲノム編集の画期的なツールが開発された。おかげで人工的に突然変異を起こさせることが容易に、しかも安上がりになった。「10年前は生物学者が束になっても不可能だった最先端のゲノム編集が、今では優秀な大学院生が2人いればできる」と、リードは言う。

<闇ネットに流出の危機>

しかも核兵器と違って、ゲノム編集の技術は国家の厳しい統制を受けていない。

イメージしてほしい。インフルエンザウイルスのゲノムは約1万の文字列で表すことができる。これは数枚の紙に収まる長さだ。オランダの研究チームがつくり出した鳥インフルエンザウイルスの遺伝情報はさらに短く、付箋1枚程度に収まる。

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最終更新:11/20(水) 17:16
ニューズウィーク日本版

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