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酒をやめたいと思ったのは「自分ならざる自分」|しらふで生きる

11/20(水) 6:00配信

幻冬舎plus

町田康



「名うての大酒飲み」と言われた町田康さんが4年前にお酒をやめた顛末を微細に綴った『しらふで生きる 大酒飲みの決断』が話題です。30年間毎日飲み続けた町田さんに起きた大変化。あらためてご自身に語っていただきました。
(構成:鳥澤光 撮影:塚本弦汰)

最初の一年は飲みたい気持ちがまだあった

――『しらふで生きる 大酒飲みの決断』はどんな本ですか? 

町田 この本は、僕が「なぜ酒をやめたのか」、「どうやってやめたのか」、「やめてどうなったか」を書いた3部構成になっています。4年ほど前に酒をやめて、最初の1ヶ月は「酒飲みたい」とばっかり考えていました。そこから酒のことを考えない時間がだんだん増えてきて、それでも最初の1年くらいは「飲んでたな、飲みたいな」という気持ちがまだあった。

その頃に『小説幻冬』でこの連載が始まって、飲まない時間が積み重なって「そういえば飲んでたな」に変わっていき、今はもう酒を飲みたいと思うこともなくなりました。

 

――連載時の「酒をやめると人間はどうなるか。或る作家の場合」からタイトルが改められました。

町田 これは、僕がどうやって酒をやめたのかという実地の体験を書いた本ですから、禁酒・断酒したい人の役にも立つかもしれない。でもハウトゥー本ではなくて、もうちょっと、人間が生きるとはどういうことかについて考えた本であるということで、いろいろ迷ったすえにこのタイトルになりました。
 

 

――禁酒・断酒については、エッセイや小説に書き残したいと考えられていたんですか?

町田 いや、それはあまりなかったんです。このテーマで、と依頼をもらって、月に一回原稿を書きながら、自分の思いや感覚について考えていきました。幻冬舎では最初に出したのが『餓鬼道巡行』という食の本で、次が家のことを書いた『リフォームの爆発』。食、住ときて今度は酒。たまたまですが、生活について書いた本が続きました。

 

――今回は美食、外食でも、ご自宅のリフォームでもなく、飲酒をやめるご自身が観察の対象になっています。

町田 本の冒頭では「自分ならざる自分」や「意志せぬ自分」というものが出てきて、どちらが「正気」でどちらが「狂気」なのか、という神話的な戦いも行われます。そんなふうにして、自分の中に降りていくような作業をしながら書いた本ですね。

自分のことってどうしてもいいように書きたくなってしまうし、自分の内側はどうなっているのか? と考えていくことって結構難しい。

逆に「また飲んでしもうたがな」、「いや、それにはこうしたわけがあって」みたいにするのもおもしろいのですが、今回は飲酒という慣習から離脱していく状況ですから、そっちにはいきませんでした。
 

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最終更新:11/20(水) 17:05
幻冬舎plus

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