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又吉直樹、芸人か小説家かを問われ「どうでもええんちゃうかなって思ってます」

2019/11/20(水) 8:00配信

週刊女性PRIME

肩書きはどうでもいい

「僕もよく『又吉さんは芸人ですか、小説家ですか』って聞かれるんですが、そこは影島と一緒で、どうでもええんちゃうかなって思ってます。

 これは『火花』でも書いたのですが、むちゃくちゃ面白い八百屋さんのトークライブと、面白くないけど一応、芸人を名乗っている人のトークライブのどちらを見に行くかと考えたら、別に誰も芸人の肩書は求めていなくて、面白さを求めているわけですよね。

 だから相手が八百屋なのか、芸人なのかという肩書にこだわる人って、自分が何を面白いと感じるのかがわかっていないんだと思う。そういう人を僕はちょっとだけ舐めてしまうんですよ。そんなの、どうでもええやんって」

 私たち女性も、世間から“妻”や“母”といったわかりやすい肩書を押しつけられ、「妻らしく」「母らしく」振る舞うことを要求されることが多い。又吉さんが語る肩書への違和感に納得する女性読者は多いのではないだろうか。

「世間は勝手に決めつけるじゃないですか。女性に対しても、結婚していない人はかわいそうとか。うちの姉なんて、学生時代から絶対に結婚したくないと言っていて、その言葉どおり今でも独身ですけど、その姉に対して誰かが『いい年なのにかわいそう』なんて言ったら、ものすごく失礼やと思う。

 他人に対して『女性だからこうあるべき』とか『芸人だからこうあるべき』とか、人を何かに閉じ込める方向に思考が向く世の中は息苦しいし、そもそも『人は何者かでなければならない』と思わされていること自体が病ですよ。

 自分や他人が何者だっていい、それをただの『人間』と言ってしまいたい。このタイトルにはそんな思いもあります」

 本作を書き終えて、「今後の僕はより自由になっていくと思う」と又吉さん。

「『芥川賞をとったのに、まだコントライブも続けているなんて偉いですね』って言われることがあるんですが、僕としては小説を書くのも、お笑いをやるのも楽しいからやっているだけ。

 やりたかったらやるし、やりたくなかったらやらへん。ただ、そうやって自由に生きていこうと思ってます」

【ライターは見た!著者の素顔】

 吉本の養成所時代は、朝までネタを書き、夕方に起きて散歩する生活をしていたという又吉さん。「外へ出ると会社や学校から帰ってくる人たちとすれ違うんですが、自分だけその中にいないことが不安になって。

 だから自販機で買った缶コーヒーをずっと持っていたんですが、それは周りから見て“散歩しながらコーヒーを飲んでいる人”という名前をつけてもらうためだった。いま考えると、僕も『何者かでなければいけない』と思わされていたんやなと思います」

(取材・文/塚田有香)

●PROFILE●
またよし・なおき 1980年、大阪府生まれ。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属のお笑い芸人。2003年にお笑いコンビ「ピース」を結成。2015年、『火花』で第153回芥川賞を受賞。2017年、小説第2作となる『劇場』を発表。他の著書に『東京百景』『第2図書係補佐』など

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最終更新:2019/11/22(金) 13:06
週刊女性PRIME

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