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ラガルド新総裁が早くも直面したECBの「根源的問題」

11/20(水) 6:01配信

ダイヤモンド・オンライン

● ECB内の意見対立 投票制移行などの議論に

 欧州中央銀行(ECB)に参加する主要な域内中央銀行(NCB)の間での意見対立がなかなか収束しないようだ。

 発端は、マイナス金利の深掘りや11月からの月額200億ユーロの債券買い入れ再開を決めた9月の政策決定にあった。

 なかでも量的緩和再開に関しては、独仏など主要国の間で慎重論が根強かったにもかかわらず、ドラギ前総裁が政策理事会で「明確な多数」の支持を頼って決定を強行したことが反感を招いたわけだ。

 9月の政策理事会での決定後も、ワイトマン独連銀総裁やビルワドガロー仏中銀総裁らから慎重論“が続出した。効果への疑念のほか、国債の買い取りは、ECBの出資割合に応じて買い取り量が決まるため、均衡財政を重視する独などは持続性に難点があるといった事情があるからだ。

 だが10月末にラガルド新総裁が就任し、資産買い取りが11月から実施に移される中で、意見対立の焦点は政策判断の妥当性から、政策決定の枠組み自体へ移行しているようだ。

● 市場との対話の「正常化」 「公式見解」への拘束は可能か

 欧州メディアが伝えるところによると、総裁は政策理事会で合意が成立したことだけを対外的に明らかにすべきということと、政策理事会の決定を明示的に投票制にして結果を明らかにすべきという2点を求める動きがある。

 第1の点は、ドラギ前総裁が重要な政策決定に際して、政策理事会での正式な決定を経ていない内容を、しばしば市場に「予告」したことに起因している。

 今回の量的緩和第2弾もその例といえ、この問題は最近、始まった話ではなく、むしろドラギ総裁の任期を通じてこうした傾向が見られたといってもいい。

 欧州債務危機のような危機的な局面では、ECBは、域内各国の実体経済や金融市場の状況が大きく異なるなかで、政策理事会メンバーのコンセンサスを形成する困難さや、各国の経済指標が出そろうまでの時間ラグの大きさのために政策判断が遅延するリスクを抱えていた。

 したがって、機動的な政策対応をするためには、ドラギ前総裁のやり方も危機における市場との対話としての意義があった面も否定できない。

 実際に、債務危機に端を発し、ユーロ圏の崩壊も懸念されたほどの深刻な状況から欧州経済を立て直し、「ドラギマジック」と称賛された政策決定は、そうしたドラギ流に依存していた面も少なくない。

 しかし欧州経済が危機的な局面を脱した後には、政策理事会による合意形成に先んじるドラギ流の副作用がよりECB内でも強く意識されるようになった。

 このため、例えばこの数年の政策理事会では、総裁を含むメンバー全員が対外的に発言すべき内容について、チーフエコノミストでもあるプラート前専務理事が一つ一つ具体的に確認を取っていたことが、議事要旨の記述から明らかになっている。

 その一方で、全ての政策理事会メンバーが「公式見解」のみを発信するのも、不自然なだけでなく、外部からは政策判断をめぐる議論の動きや方向性が推測しにくくなり、政策決定が、市場関係者にとっては唐突に打ち出されるサプライズと化し、金融市場に不要の不安定性をもたらすことにもなりかねない。

 実際、ラガルド体制でチーフエコノミストのポストがレーン氏に引き継がれるとともに、少なくとも議事要旨からは、上記のような発言内容を拘束する動きは見られなくなっていた。

 その意味では、この問題に改めて焦点が当てられていることは興味深い。

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最終更新:11/20(水) 6:01
ダイヤモンド・オンライン

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