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「子どもの頃、目にした高収入求人バニラのトラックを思い出して」働き始めた貧困女性の末路

11/20(水) 11:00配信

デイリー新潮

条例の抜け穴を走るアドトラック

 実のところ、騒音や派手な電飾や宣伝内容など、公共空間に馴染まない広告宣伝車の存在は、以前から問題視されている。

 東京都では2011年に屋外広告物条例を改正し、走行車両が掲示する広告についても対策を打ち出してきたが、これは東京都ナンバーの車両にしか効力がないものだった。そのため他県ナンバーのアドトラックが都内を走行することを防げず、問題は野放しとなっている。

 路上での物品の配布に関しては、警察による道路使用許可書があれば、露骨なわいせつ描写や反社会的な内容のもの以外は誰でも配布が可能だ。

 ハロウィンで配布されたうまい棒やアドトラックに掲載された文言について、東京都迷惑防止条例を参照してみても、そこに明確な条例違反を見出すことはできなかった。

 つまり条例に照らすなら、デザインや文言をうまく隠して宣伝する限り、街角で「あなたも風俗嬢として働きませんか?」と、うまい棒を配布することも、アドトラックを走らせることも、なんの問題もないわけである。

奇妙で面白いという「価値」

 広告プラットフォーム事業を展開するベライゾンメディア・ジャパン(元Oath Japan)は、米Oathが2018年に実施した「ブランド愛着度指数調査」の日本国内での結果を発表している。

 ブランド愛着度を形成する6要因のひとつに「トレンドの創出」と「カスタマーエクスペリエンスの向上」という項目がある。定義はそれぞれこうだ。〈製品やサービスに関するイノベーションのみならず、次にブランドが何をするか、何を新たに生み出すかにも注目させる〉〈生活者とのあらゆるコミュニケーションを、クリエイティブかつインパクトのあるものにする〉

 結果からいえば、18歳~34歳までの若年層は、この2項が他の4つを大きく上回っていた。面白い何かをしでかしてくれそうな、相互コミュニケーションのとれるブランド、もしくはサービス、あるいは製品に対して、若年層は強い愛着を持つ。

 バニラのアドトラックの存在は強烈だ。ひとたびあの音楽が流れてきたら、そんなつもりはなくともついそちらに注目してしまう。都心の繁華街を走り回るそれを、「ヘンだけど面白いもの」として認識する者は確実にいる。

 現に、SNSで調べてみると、「バニラのトラック発見!」「バニ子(着ぐるみにもなっていたバニラの広告に描かれているキャラクター)と遭遇!」「バニ子可愛い」「バニ子と写真撮った~」などの書き込みを見つけることができる。

「ヘンだけど面白い」ものを面白がる心性は誰にでもあり、それ自体は問題ではない。しかし面白いからという理由で、それが抱える問題を考えられなくなることは深刻な問題だ。

 多くの若者は、自分や友人知人が性風俗店で働くとは夢にも思わず、実際に働いている女性はそのことをまず周りには打ち明けない。「性風俗で働く=エロいことをしてラクに大金が稼げる仕事」という現実と乖離した印象だけが定着し、性風俗全般が一種の下ネタやジョークのネタとして扱われ、真面目に議論することができなくなっている。

 バニラのアドトラックや着ぐるみのゆるキャラを面白がって受け入れることは、それらが流す情報をも無批判に受け入れることになるのだ。

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最終更新:11/21(木) 10:53
デイリー新潮

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