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中国のシャープパワーから見る北大教授拘束事件

11/21(木) 15:01配信

nippon.com

川島 真

北海道大学法学部の岩谷將(のぶ)教授が2カ月以上も中国当局に拘束され、ようやく釈放された事件。中国側の説明を聞くと、両国間の価値観の相違が改めて浮き彫りになるとともに、今後の相互交流の先細りが憂慮される。

2カ月以上も拘束、安倍首相が「懸念と憂慮」伝える

2019年9月8日、北海道大学法学部の岩谷將(のぶ)教授が、北京市内のホテルで中国当局に拘束された。教授は、日中戦争史を中心とする中国近現代史の研究者で、台湾や米国、そしてもちろん中国の文書館や図書館に所蔵されている史料を丹念に調べ上げる歴史研究者である。拘束のニュースは10月18日に日本のメディアが報道して周知の事実となった。当初、日本のメディアでは反スパイ法容疑などとされたが、中国外交部スポークスマンは国内法違反とだけ述べていた。

このことが内外に知られると、日本の諸学会、研究組織などが相次いで意見表明や抗議を発した。新しい日中関係を考える会、日本現代中国学会、アジア政経学会、そして日本国際問題研究所、中曽根・世界平和研究所などである。また、『朝日新聞』などの主要紙には研究者の意見記事が掲載され、『日本経済新聞』は社説で憂慮を示した。他方で、9月末、この問題が公表される前に茂木敏充外相から王毅外相に、また10月の天皇の即位の礼に際して来日した王岐山副首相、また11月にタイで行われた東アジアサミットに参加した李克強首相に対して、安倍首相が懸念と憂慮を伝えた。特に2020年春の習近平国家主席の来日を成功させるためには、本件を速やかに解決すべき、と日本側は求めたたようだ。

11月15日、2カ月以上にわたって拘束されていた同教授が解放されたと、日本の各種メディアが一斉に報じた。安倍首相と李克強首相との会談が功を奏したように思える。安倍首相が優先順位をあげて李首相に要求をしたのは、岩谷教授のご家族なり、あるいは菅義偉官房長官や首相の側近などから強い希望、要請がなされ、それが首相を動かしたのだろう。いずれにせよ、習近平国家主席の訪日をほぼ5カ月後に控える状態で、日本の総理大臣や閣僚が相次いで要請し、日本国内で岩谷教授の拘束に抗議する雰囲気が広がることで事実上の釈放(保釈)に至ったと言える。釈放は、中国側としてはギリギリの判断だったようだ。中国側のメディアはこのことを国内で必ずしも報じていないからだ。報道しているものも外交部の言葉の引用ばかりだ。これは、釈放が「弱腰」だと国内からの批判にさらされる可能性があると当局が認識していることを示すのかもしれない。

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最終更新:11/21(木) 15:01
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