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「最低賃金」を引上げても誰も困らないという衝撃の調査結果 「店が潰れる」「商品の値段が上がる」って誰が言った?

11/22(金) 18:36配信

クーリエ・ジャポン

商品価格を上げても、客足の減少は見られず

「最低賃金、時給15ドル」に向かって米国各州がすでに動き出している。

日本でもアルバイトやパートなどを含む非正規雇用で働く人はいまや労働者全体の約4割にのぼり、最低賃金をめぐる議論が年々活発化している。そして、最低賃金の引上げの話が出るとこんな批判や懸念の声が出てくるのは米国でも同じだ。

「店の負担が大きくなって、店が潰れてしまう」
「雇用主は賃金が上がったぶん、それを相殺するために従業員の数を減らさなければならなくなる」
「経営側の支出が増えれば、商品の値段を上げざるを得なくなる(結果的に、消費者の負担が増える)」……。

米国でもっとも物価の高い都市の一つであるニューヨーク市では、昨年末(18年12月31日)より従業員数が11名以上の企業の最低賃金が時給15ドル(約1650円)へと引き上げられた。いきなりではなく、最低賃金が時給11ドルだった2016年末から毎年2ドルずつ段階的に引き上げるという方針に従ったものだ。

昨年末の時給15ドルへの引上げから約1年が経つが、同市では当初懸念されたようなネガティブな面はほとんどみられず、むしろ全体的には「プラス面が多い」と米メディア「カンバセーション」は指摘し、その理由について報じている。

最低賃金の引上げによって支出が増えた外食業界の雇用主は、どのような対策を迫られるか。同メディアによると雇用主のオプションは大きく2つだ。

1.それぞれの従業員の勤務時間を減らす。
2.商品の価格を上げる。

ニューヨーク市の外食業界は「商品の価格を上げる」手段を取るところが多かったという。もちろん、商品の価格を上げれば「客足が落ち、結果的に閉店に追い込まれてしまう」という声もあった。だが「そういった悪循環は起こっていない」。

プラス面が大きい理由

実際、悪循環どころか「レストランの収益も雇用も増加している」。

これについて労働と雇用に詳しいニューヨーク州立大学バッファロー校の准教授は「雇用主は最低賃金が上がったからといって、商品の価格を必ずしも大幅に上げる必要はないから」と取材に答えている。

たとえば、ニューヨーク州のお隣ニュージャージー州のレストランでの調査結果によると、最低賃金が88円増加するにつれて商品価格は3.2%上昇。今回のように最低時給が2ドル増えて15ドルになった場合で計算し、仮に商品価格を10~15%上昇させたとしても「客足の減少につながるとは考えにくい」という。

なぜなら、12ドル(約1320円)だったハンバーガーの価格を10%上げて13.20ドル(約1450円)にしたところで、差額の1.2ドルを理由にその店での購入を控える人が増え、閉店に追い込まれる可能性はほとんど考えられないと述べる。

同メディアは「低賃金労働者の給与があがれば、彼らはより多くのお金を使うようになる」と、シカゴ連邦準備銀行の調査をもとに主張する。

経済調査の実施および政策提案をおこなう米シンクタンク「経済政策研究所」によると、2018年の時給13ドルもしくはそれ以下の低賃金労働者の人口は、国内労働者の約25%を占めるとのこと。ゆえに「最低賃金の引上げによるプラスの経済効果は大きい」「最低賃金の引上げは、雇用増加につながる」という見解を示している。

「低賃金労働者は、物価の上昇に合わせて賃金が上がれば購買意欲が増し、これが経済を後押しする」

たとえば、外食産業をみてみると、より多くの人が外食できるようになれば外食産業の「ニーズは増加し、雇用削減どころか増加すら期待できる」。

ただ、「ニューヨーク州における最低賃金の引上げによるネガティブな影響がみられない」のは「ひょっとすると、人口が増加傾向にあり、州の経済が潤っていることに起因するのかもしれない」とカンバセーションは書く。

不況もしくは下降気味で、雇用主にはすでに最低賃金の引上げをする余裕がなく、また低賃金労働者の困窮具合もすでに深刻なレベルまで落ち込んでいれば、上述のような好循環にはならない可能性もあるという。

また、ニューヨーク市独立予算局の調査によると、市の飲食店の数は増加傾向にあるが、レストラン業界に従事する就業人口は17年から18年の間に6000人減少。過去10年間で減少したのはこれが初めてとのことで、「最低賃金の引上げは、雇用増加につながる」という見解には否定や疑問の声もある。

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最終更新:11/22(金) 19:50
クーリエ・ジャポン

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